概略
高齢猫のケアには、食事やサプリのほか、介助用品など、お家にあると便利なアイテムがたくさんあります。
すぐに全部必要という訳ではありませんが、一度、「こういう方法もあるんだ」と、眺めていただけると良いかなと思います。
1. 高齢猫さんのお家での経過観察ポイント3つ!
これらの項目は、「以前と比べて」など、時間軸で変化を把握することが重要です。
こまめにチェック!
- 食欲の有無(実際に食べている・飲んでいる量を把握)
- 体重の増減(○○g増えた・減ったを把握)
- 排尿・排便の様子(排尿量、軟便や便秘が続いてないかどうか)
2.食べ物(療法食・非療法食)
食べ物と健康状態は大きな関わりがあります。
高齢猫の健康に考慮されたフードには、療法食と、療法食でないフード(総合栄養食)が販売されています。
療法食によって健康を害する場合もあるの?
ペットフードの表記には、総合栄養食と表記できるか、栄養素の基準があります。
療法食は、特定の栄養素を「制限」することが多いので、総合栄養食の基準を満たさない場合もあります。
良かれと思って…という事になりかねないので、療法食は、獣医師の診察や栄養相談を受けながら使用するようにしてください。
食事療法食(腎臓系)は、特定の栄養素(タンパク質やリン)を「制限」しているから気を付けて使わないとダメ
腎臓病療法食
猫の慢性腎臓病用の療法食には、
完全に動物病院専売の流通制度で販売されるものと、通販サイトでも販売・流通されているフードがあります。
一部のメーカー、商品は、通販サイトには流通させず、
購入の際に動物病院コードなどで、動物病院のアドバイスを受けていることを確認する方法を使用しています。
《例》ロイヤルカナン Dライン,ピュリナ プロプラン ベテリナリーダイエット
猫の腎臓病療法食については、👇こちらの記事で一覧をご紹介しています。
「どれがお奨め?」とよく聞かれますので、私は個人的にスペシフィックを挙げますが、
タンパク質やリンの制限といったコンセプトは、どのメーカーも同じような目的で作られています。
慢性腎臓病は、タンパク質、リンの制限とともに、血管・血流をスムーズにケアできるような栄養素が含まれていると良いと感じています。
スペシフィックは単に「魚油」という表記ではなく、EPAやDHAといったオメガ3-脂肪酸に対してこだわりを持っているブランドだと感じています。
(スペシフィックの詳しい製品情報は⇒プロダクトブックから閲覧可能です)
血管・血流をスムーズにケアできるような栄養素(オメガ3-脂肪酸)が含まれているのが👍ポイント
療法食では、タンパク質の制限が重視されているものも多いですが、
タンパク質に関しては、最適なバランスがどれくらいなのか…研究は続いています。
極端な制限し過ぎはダメ。足し算・引き算のバランスが大切。
療法食ではないもの(腎臓の健康に考慮)
療法食でない総合栄養食のカテゴリーで、猫の腎臓の健康に配慮したフードは多く見かけます。
ペットフードの表記のルールで、「総合栄養食」か「一般食」かという栄養基準による分類があります。
「総合栄養食」は次のように表示されています。
引用元:ペットフード公正取引協議会・表示について
「この商品は、ペットフード公正取引協議会の定める分析試験の結果、総合栄養食の基準を満たすことが証明されています。」または「この商品は、ペットフード公正取引協議会の定める給与試験の結果、総合栄養食であることが証明されています。」
ペットフード公正取引協議会では、総合栄養食を証明する基準として、世界的に認められた小動物の栄養基準となっているAAFCO(全米飼料検査官協会)の分析試験による栄養基準、または給与試験プロトコールを採用しています。
栄養素のバランス・過不足を考慮した場合、総合栄養食の表記があるフードをメインに選ぶことをお奨めします。
療法食も作っているメーカーの総合栄養食
ロイヤルカナンや、ヒルズ、ピュリナなど、療法食を作っているメーカーは、
常に最新の獣医学の知見を取り入れる努力を行っています。
そろそろ食べ物について考えてみようかな?という年齢に差し掛かった場合には、こういったメーカーのフードから試してみると良いと思います。
ステアライズド (活動量が少なめ、室内猫、避妊去勢してある猫、におすすめ)
インスティンクティブ(活動量が多め、未避妊去勢の猫、におすすめ)
総合栄養食に特化したブランド
猫さんは食べ物の好み(こだわり)が強い動物だと言われますが、
味にうるさいという訳ではなく、食べ慣れないものに警戒心が強いという感覚だと思います。
若いころから食べ慣れているブランドのフードなら、フードの変更も難しくないことが多いです。
ジェーピースタイル 和の究み 猫用セレクトヘルスケア 腎臓ガード
投薬補助・おやつ
投薬におやつを使うのはダメだという意見もありますが、
錠剤や粉薬、猫ちゃんに投薬するのは嫌がるし、ココロ折れそうになります。
苦痛な投薬の時間がすこしでも嬉しい時間になってほしいと思います。
高齢猫の健康に配慮した低リン・低ナトリウムちゅーるも市販されています。
3.サプリメント
サプリメントには、栄養素を補充するためのサプリと、排泄を促すサプリの2種類があります
吸着系
吸着系のサプリメントは、健康をサポートする栄養素を補充するサプリではなく、
過剰摂取された物質を腸の中で吸着して、そのまま便の中に排泄させようというサプリメントです。
整腸系
乳酸菌・食物繊維
栄養素の入り口、腸内環境を整えて、身体の健康をサポートという腸活の概念は、猫の身体にも当てはめる事ができます。
とくに、腎機能が弱ってくると、身体の水分バランスが崩れて、下痢や便秘が長引いてしまう事が多々あります。
この先、一生、薬を飲んで下さいとなる前に、できる事があると思います。
補給系
慢性腎臓病になると、エリスロポエチンという造血ホルモンが少なくなり、腎性貧血を引き起こすことがあります。
貧血には、その他にもビタミンB群の不足によるものや、鉄分が不足する事で起きるものもあり、サプリメントによって補ってあげる場合があります。
また、尿量が増える事から起きるカリウムの不足にもよく遭遇します。
猫用のカリウム補給サプリは、念のため、かかりつけの獣医師と相談していただき、カリウム値が高くない事を確認してから、使用してください。
ビタミン、鉄、カリウム
猫には必須のアミノ酸のタウリンと、ビタミンB群が同時に補えるタウビタB
鉄分とビタミンB群が補えるペットチニック
かつお節エキス配合で、嗜好性が抜群のPEクエン酸カリウム
体重・筋力維持
診察の際に、「この子、痩せてますか?太ってますか?」という質問をよく受けます。
高齢の猫さんの場合、太っている事よりも、痩せていく事が心配で、筋肉量の維持が大きなポイントになります。
もともとエネアラは、ドロドロ血やぽっちゃりの子で、体重の調節をサポートする際の燃焼系サプリですが、
脂肪燃焼⇒筋肉がつく、という好循環を生み出すのでは?と、注目されています。
3.健康管理
病院での血液検査だけが、経過観察ではありません。
お家の方が、ちょっとした変化を見つけやすい場合も多いです。
体重計
体重の減少が
5%までなら→要観察(2~4週間)
5~10%なら→対応必要
10%を超える減少→深刻!
例えば・・・いつも4kgの猫さんが
3.9kg・・・100g減少=2.5%減少
3.8kg・・・200g減少=5%減少
3.7kg・・・300g減少=7.5%減少
3.6kg・・・400g減少=10%減少
となります。
体重測定や排尿を確認など、お家で日常の記録をつけられる方法もありますので、検討されてみてはいかがでしょうか?
体重や排泄情報をかんたん記録
》Catlog Boardを使用する事で結果的に医療費の節約になった症例
血圧計
慢性腎臓病と高血圧を併発している場合、高血圧が心臓•血管、眼、脳へ悪影響を及ぼす事があります。
高血圧かどうかの判断・診断には血圧測定を行いますが、高血圧の診断は、慎重に行う必要があります。
特に猫さんでは、病院、診察室での血圧は高めに出ることが多く、時間をかけて何度か測定するか、
場合によっては、ご自宅での血圧測定をお願いする場合があります。
ERDEの動物用血圧計(PES-1700)は、
家庭用の動物用一般医療機器として認可を取得したペットのための血圧計です。
「ERDE」のロゴが入っていない安価な模造品も多く流通しています。
正規品を取り扱われている「いま何度」さんから購入されることをお奨めします。
動物用医療機器製造販売番号:第29-82号
クラス分類 一般医療機器
4.介護用品いろいろ
年齢を重ねる事によって、今まで出来ていた事ができなくなったり、色々な苦痛を訴える事も出てきます。
高齢猫の夜鳴きは、『認知症だからしょうがないよね』と、片づけられがちですが、一度、苦痛の元を探ってあげる事も大切です。
にゃんこスロープ・ステップ
体位変換クッション/体圧分散マット
5.食器関連
お歳をとってくると、 首の上下も辛くなります。 食欲が湧く工夫の一つ。
食器は首の下くらいの高さまで底上げしてあげると良い場合があります。
ルルパスタンド
同様のコンセプトで、FUKUMARUからも、スタンド付き食器が販売されています。
猫壱
猫用 脚付フードボウルの元祖は、猫壱さんではないでしょうか?