ポイント
AIM活性化成分が配合された、腎臓サポートの療法食「AIM vet's」が、Pinon社から発売されました。
既存品の「AIM30との違い」についても解説します。
AIMとは何か・・・?
AIMは、「細胞の死骸」や、「有害化したタンパク質」のような「体内の老廃物に目印をつける」タンパク質です。
老廃物の蓄積は、様々な病気の原因となります。
通常「AIMはIgMと結合」しています。
老廃物が溜まってくると「IgMから離れ」て、「活性型AIM」となります。
活性型AIMは、老廃物にくっつきます(老廃物に🏳目印をつける)。
マクロファージ(老廃物のお掃除係)が見つけやすくなり、「効率的に分解・処理」されます。
猫とAIMの関係
猫では、他の動物と比べ、「AIMがIgMから離れづらい」という特徴があります。
そのため、老廃物の蓄積が腎臓に起こりやすく、「慢性的な炎症」を生じさせます。
猫で慢性腎臓病が多発する「原因の1つ」であると判明しました。
AIMを活用した新しい治療法
現在、「AIMを猫に補充(注射)する治療法」を、宮崎教授は研究しています。
「腎臓内に蓄積された老廃物を効率的に除去し、慢性炎症を抑制する」という作用です。
薬事申請に向けて「来春から、治験が開始される」との情報もあります。
AIM vet's 腎臓サポートとは?
今回新登場した、「AIM vet's 腎臓サポート」は、AIMそのものが含有されている訳ではありません。
猫の体内のAIMの「活性化を促すことが目的」の、食事療法食です。
使用対象と目的
IRISの「ステージ分類Ⅰ~Ⅱ」の、猫さんへの使用が、想定されています。
比較的、「早期の」慢性腎臓病の猫に、給与するように設計されています。
慢性腎臓病のIRISステージ分類
ステージ | クレアチニン (mg/dL) | SDMA (μg/dL) |
---|---|---|
ステージⅠ | < 1.6 | < 18 |
ステージⅡ | 1.6 - 2.8 | 18 - 25 |
ステージⅢ | 2.9 - 5.0 | 26 - 38 |
ステージⅣ | > 5.0 | > 38 |
EUでの療法食の位置づけ
EUでは、療法食の表示に対しては厳しい法律があります。
療法食は「PARNUTs(particular nutritional purposes)パーナッツ」と呼ばれています。
【参考文献】療法食の適正使用の現状と課題
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jpan/17/2/17_86/_pdf
「L-シスチン」・「L-メチオニン」の含有量を調整し、「猫の体内のAIMを活性化させる」というコンセプトの商品です。
また、腎臓のケアのために、「オメガ3系脂肪酸(EPA、DHA)が配合」されています。
※ EPA+DHA:約0.36%(サーモンオイル、藻類油由来)
余談ですが、オメガ3系脂肪酸(EPA、DHA)に関しては、フードメーカー各社、いずれも、かなり考慮しています。
マルカンAIM30との違い
AIM vet'sとAIM30の違い
「AIM vet's 腎臓サポート」と、「AIM30」は、どちらも、「AIMの働きを活性化するため」のフードです。
しかし、その「目的や使用方法」には明確な違いがあります。
AIM vet's 腎臓サポート
- 原産国: オランダ
- 種別: 食事療法食
- 特徴: 慢性腎臓病の早期段階(IRISステージ1~2)にある猫を対象に開発。
- 使用時期: 病気と診断された後、獣医師の指導のもとで使用する。
※対面での診察や相談が必須 - 形態: ドライフードのみ(500g, 2kg)。
AIM vet'sは、リンやタンパク質を調整しています。
腎臓の負担を減らすために設計されています。
また、他の治療と併用することを前提としています。
AIM30
- 原産国: 日本
- 種別: 総合栄養食
- 特徴: 健康な猫や、腎臓病予防を目的とした日常食として適している。
- 購入方法: 一般的なショップや、オンラインストアで購入可能。
- 形態: ドライフードのほか、トッピングやおやつとして使える関連商品も展開。
AIM30は、病気の猫だけでなく、予防的な観点から、「健康な猫にも使える」フードです。
そのため、特定の診断がなくても、「手軽に取り入れられる点」が魅力です。
適切な選択の重要性
AIM vet'sは「病気と診断された猫」、AIM30は「健康な猫や予防目的」のために作られています。
それぞれの目的に応じて、適切な商品を選ぶことが重要です。
愛猫の状態に合わせて、動物病院スタッフに相談しながら選択しましょう。
猫が30歳まで生きる日
宮崎先生は、飼い主さん向けにわかりやすい書籍を出版、お忙しいスケジュールの中、講演会もされています。
専門用語は少なめで、読みやすい本でした。
手に取ってみては、いかがでしょうか?