こんにちは、臨床経験20年の獣医師です。
日々のクリニック診療と並行して、皆さんに有益な情報をお届けするため、
今回は「注射部位肉腫」について詳しくお話ししましょう。
注射部位肉腫はまれではありますが、発生した場合のリスクは極めて高いです。
しこりや変化に気づいたら、3・2・1ルールに基づいて獣医師の診断を受けましょう。
いち早く対応することで、愛猫を守る最善の手段となります。
愛猫の健康のためにも、疑わしい症状があれば遠慮なく相談してください。
それが、注射部位肉腫の最も確実な予防法です。
何はともあれ、「肉腫」とは?
まずは基本から。
肉腫という言葉は病理学の用語であり、
「非上皮性の悪性腫瘍(がん)」を指します。
これは要するに非常に攻撃性のあるタイプのがんです。
注射部位肉腫とは?
かつては「ワクチン接種部位肉腫」や
「ワクチン関連性肉腫」と呼ばれていましたが、
ワクチン以外の注射薬も関与することが明らかになり、
「注射部位肉腫」という名前が一般的になっています。
抗生物質、長期作用型ステロイド、インスリンなどもリスク因子とされています。
注:採血によって肉腫は発生しません。
発生頻度とリスク
日本での疫学調査はまだありませんが、
アメリカとカナダの調査によると、
ワクチン接種を受けた31,671例中で肉腫が2例(0.0063%)発生しています。
しかしこの数値は決して安心できるものではありません。
なぜなら、この肉腫は非常に厄介な性格を持っているからです。
- 速やかに大きく、深く浸潤していく
- 再発しやすい(切除後6ヶ月以内に80%以上が再発)
- 転移する可能性も(肺、リンパ節、肝臓、骨盤など)
症状が現れたらすぐに相談を
何か違和感、特にしこりを感じたら、
できる限り早く獣医師に相談することが肝心です。
そこで導入されているのが「3・2・1ルール」です。
- しこりが3ヶ月以上存在している
- 2cm以上になったとき
- 1ヶ月以上大きくなり続けている
このような症状があれば、組織生検(病理検査)をおすすめします。
見た目にはなんでもないように思えても、確認する価値は大いにあります。
予防策は?
- 不必要なワクチンは避ける
- 切除が難しい場所には注射をしない
- ワクチンは皮下に注射する