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獣医師が『「猫が30歳まで生きる日」宮崎徹 著』を読んで。◆読書感想文◆

2023年7月14日

 

スキマ時間に読めるビジネス書

猫が30歳まで生きる日 宮崎徹 著 時事通信社

 

ポイント

この本を読む前、次のような疑問が、私の中に少なからずありました。

  • AIMのことを信用しても良いのだろうか?
  • 宮崎徹先生の研究を信用しても良いのだろうか?
  • 猫が30歳まで・・・ずいぶん煽り過ぎのタイトルじゃないか?
  • なぜ"医師"が動物の病気の治療の研究を始めたのか?

 

私は、獣医師という立場で、

自身も愛猫を慢性腎臓病で失っている身として、

たくさんの慢性腎臓病の患者さんを抱えている身として、

この本から、宮崎先生の病気に立ち向かう姿勢、学ぶべき点を、

数多くいただく事が出来ました。

 

獣医学書のように、病気の治し方が書いてある本ではありませんが、

病気を知る、敵を知るために必要な専門知識を、

簡単な言葉で解説されているので、飼い主さんにもわかりやすい構成です。

 

ぜひ、手に取って読んでいただけると良いと思います。

 

猫が30歳まで生きる日 宮崎徹 著 時事通信社

猫が30歳まで生きる日 Kindle版

 

 

獣医師が治療・薬に関する本を読む場合、

具体的な治療方法、薬の用量などを"調べる・覚える"という作業を、

獣医学雑誌やテキストで行います

本を"読む"というよりも、"調べる"という作業のような読書です。

 

猫が30歳まで生きる日 のような、書店の本棚に並ぶ書籍を読む場合、

正直、内容について疑うような先入観があったり、

その根拠は?エビデンスは??と尖った感覚をチラつかせてしまいます。

 

"とりあえず否定"のような思考回路はちょっと置いといて、 

今回は次の3点を中心に、肩に力を入れず、ゆるっと読んでいきたいと思います。

  1. 宮崎先生の研究内容がつながっていく
  2. 宮崎先生の土台になっている想い
  3. 薬を作る・治療法を確立する際に立ちはだかる壁

 

宮崎先生の研究内容がつながっていく

私のふせん読書メモ1

 

前半は、宮崎先生が卒業後、医師になられてから研究者になり、

様々な方との出逢いによって、研究成果を挙げられていく・・・

一見、自叙伝のような内容が続きます

 

ここで、「なんだ。猫の腎臓病の話が読みたかったのに」と、

読むのを止めてしまう方も、多いようです。

 

この前半の内容が、伏線回収のように次々とつながります。

 

AIMのはたらきは"ゴミ掃除"に例えられます。

身体で発生する"ゴミ"の種類には色々あって、

それらへの対応の仕方が、病気(原因)によって違うという概念が、

わかりやすく説明されています。

 

宮崎先生の土台になっている想い

私のふせん読書メモ2

 

『治療できない病気を何とかしたい』このフレーズが、何度も繰り返されます。 

元々は人の医療への応用が目的だったAIMが、

ひょんなことから、猫の腎臓病の克服へ期待されていく・・・。 

でも、"治療できない病気を何とかしたい"に、人だろうが猫だろうが違いはない。

そういう想いが、随所から読み取れます。 

 

宮崎先生の若い頃のエピソードのひとつに、

新潟大学の藤田恒夫先生とのやり取りが取り上げられています。

顕微鏡の細胞を見ながら、「綺麗・汚い」を語るシーン。

 

私の学生時代。

獣医学科の病理学の教授(麻布大学 代田欣二先生)と、

人の小児がんの細胞の見たときに、

代田先生が「こんなの、細胞見ただけで涙が出るよね」と仰ったのが心に残っていて、

医学の研究の畏怖を感じました。 

 

AIMは宮崎徹先生が1999年に発表された分子。

研究には長い歴史があって、偶然の発見も多いものの、

固定観念にとらわれず時間をかけて多方面から研究されています。

AIMのことを信用しても良いの?

宮崎先生のことを信用してもいいの?

という疑問がしだいに解消されます。

 

薬を作る・治療法を確立する際に立ちはだかる壁

私のふせん読書メモ3

 

臨床の治療の現場にいる身として

「はっ!」とさせられた言葉がありました。

 

  1. 専門性の弊害
  2. 副作用について
  3. 日本には予防薬という概念が無い

 

① 最近は、腫瘍や循環器、整形外科、皮膚科、歯科・・・

専門性を追求する動物病院も多くなりましたが、

一次診療と呼ばれる"街の動物病院"の多くが、専門性を持たないクリニックです。

こういった獣医療の環境は、AIMの研究向きの環境かもしれません。

 

『○○という薬は、○○病の薬』というような先入観が、

専門性が深まるほど、邪魔になることが考えられるからです。

 

② AIMの副作用については、

厳密にはアレルギーに対する注意が必要、

という点を挙げてらっしゃいます。

※「副作用がない」という概念も、日々、臨床の現場で薬を扱っている人ほど、

"副作用が無い"=”作用”もない、という先入観が入り込みます。

 

③AIMの魅力は、病気になった時、病気の原因に対して使うという事もできますが、

身体に病気になる素が溜まらないようにする事も可能なはずで、

"予防"的な摂取が推奨されます。

 

動物病院では、フィラリアや、ノミ・マダニなど、

ワクチン以外の"予防薬"という概念が、多少、根付いていますが、

人間の医薬品には、予防薬という概念がない以上、

サプリメントのような製品から始めることも頷けます。

 

AIM30というキャットフードの開発、という発想は、

理にかなっているなと感じました。 

「キャットフード AIM30 」って期待していいの?? 獣医師が検討ポイントを解説!

 

読後感

AIMの発見から、経時的な流れに沿って文章が連なりますので、

全体を通して、"辻褄が合う"研究だと感じました。

科学論文では無いので、重箱の隅をつつくような必要もありませんし、

例え方も一般の方にわかりやすいので、読みやすいと思います。

 

  • 現在、慢性腎臓病の猫をケアしている飼い主さん、
  • AIM製剤の発売を心待ちにしている飼い主さん、
  • 臨床の現場で働く動物病院スタッフ(獣医師・愛玩動物看護師)…。

 

AIMの効果、宮崎先生のことを信用しても良いのだろうか?という疑問を

解消することが、できるのではないかと思います。

 

猫が30歳まで生きる日 宮崎徹 著 時事通信社

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