- 色んなメーカーの慢性腎臓病用の療法食、どう違うの?
- 食べなくなったら、他社のフードを試してみてもいいの?
- おやつをあげたら、療法食は意味なくなってしまうの?
- せっかくなら、喜んで食べてくれるものを続けたい
"良い想い出"になる療法食選び
猫さんが慢性腎臓病の診断を受けると、食事療法の提案がされます。
『食事療法によって生存期間が延長する』というデータが(※1)食事療法の根拠の1つです。
食事療法の大きなハードルに、「食べてくれるかどうか?」があります。
獣医師によっては、
「療法食しか与えてはいけません!」
「他のものを与えると、全く無意味です!」と厳しく仰います。
切り替えがうまくいかなくても、自分に責任を感じないで欲しいです。
獣医師になって22年。
たくさんの慢性腎臓病の猫さん・飼い主さんと接してきました。
私自身も2017年に愛猫を、19歳で慢性腎臓病で亡くしました。
慢性腎臓病の猫の飼い主のみなさんが、
これは食べてくれるかな?こっちの方が好きかな?と、療法食選びをする・・・
こういう時間さえも、後々、「良い想い出」になるといいな、と思います。
猫の腎臓病の食事療法には次のような目的があります。
腎臓病療法食の目的
- リンの制限
- タンパク質の調節
- 水分をしっかり補給
- 体重の維持
これらは、ほぼ、全てのメーカー共通です。
プラスαの部分に、各メーカー独自の強みを取り入れて差別化しています。
療法食は総合栄養食ではありません
療法食は、特定の栄養素を制限したり、バランスに手を加えています。
健康な猫に療法食を与え続けると、健康を損ねる場合があります。
かかりつけの動物病院スタッフと相談しながら使用してください。
SPECIFIC スペシフィック 腎心肝アシスト
個人的に一番のおススメ。
デンマークのデクラ社製。
1975年から犬猫用の食事療法食に着手した製薬会社。
常に品質の向上のため、研究と開発を続けています。
スペシフィック製品、最大のセールスポイントは「オメガ3脂肪酸」です。
- オメガ3脂肪酸
- お魚の良質の脂質、EPAやDHAが有名です。
炎症を抑える作用、免疫反応の調節に関わっています。
病気の予防・悪化に関わる栄養素です。
血液の流れをスムーズにし、全身の血の巡りにも関わります。
フードを食べているだけで補えるのは、かなりおトクです。
スペシフィック FKD
スペシフィック FKW(100g x7)
アルミトレイ容器。缶詰に比べて、空ゴミの処理がしやすいです
1箱7個入りのパッケージなので、お試ししやすい
FKWの封を開けてびっくりするのが、1時間も経つと表面の色がかなり変わっていきます
”きちんといたむ”フードです
※フードによっては数日経過しても傷まないものが、意外に多いです
和漢・みらいのキャットフード低たんぱく
スペシフィックFKDと同様、オメガ3脂肪酸にこだわっています。
和漢みらいのキャットフード【特別療法食(腎臓用)】👆スペシフィック同様、オメガ3脂肪酸にこだわっている部分が、推しポイントです。
パッケージは800gと、少量パッケージ。
賞味期限が短めで、"きちんといたむ"フードです。
動物由来のタンパク質は、アルギニンなどの必須アミノ酸の摂取に重要です。
VET'S LABO メディムース 猫用 腎臓サポート
療法食ではなく、機能性栄養補助食という表示の製品です。
ムースタイプのフードは、同時に水分の摂取が可能です。
慢性腎臓病は尿量が増え、脱水状態に陥りやすいので、充分な水分摂取が必要になります。
Hill's 日本ヒルズコルゲート k/d腎臓ケア
「ヒルズ」と略称で呼ばれることが多いです。
獣医療に食事療法を取り入れたパイオニアといえばヒルズです。
「サイエンスダイエットのメーカー」で有名です。
腎臓病用の療法食は腎臓(kidney)の頭文字を取って、k/d (腎臓ケア)と呼ばれています。
パウチ製品も発売されました。
k/d ドライ(500g,2kg,4kg)
ヒルズのドライ製品には、ツナ味とチキン味のバリエーションがあります。
粒は小さめで、日本の猫にはちょうどいい大きさです。
体重3kgの猫さんだと、500gはおよそ10日分の量です。
原産国はオランダです。
k/d 缶詰 (156g缶)
ヒルズの缶詰(156g)製品にも、ツナ入りとチキン入りのバリエーションがあります。
3kgの猫さんで、1日あたり1.1缶が給与量の目安です。
原産国はアメリカ合衆国です。
k/d 缶詰 (シチュー缶 82g)
シチュー缶は、旨味が凝縮されたスープ(とろみ)で、嗜好性を重視した製品です。
味も、「ツナ&野菜入り」と「チキン&野菜」の2種類あります。
3kgの猫で1日あたり2.8缶が、1日の摂取カロリーの目安となります。
原産国はアメリカ合衆国です。
k/d ケイディー パウチ
ヒルズのウエットフードにパウチタイプが登場!
ごみの処理が大変、という意見が多かった缶詰に変わる選択肢です。
k/d 早期アシスト (ドライ・シチュー缶)
早期アシストシリーズは、
早期の腎臓病(IRISステージ1)の猫を栄養面からサポートすることに役立ちます。
早期アシストのドライ製品は、チキン味のみ、サイズは500gと2kgの2種類です。
体重3kgの猫さんだと、500gはおよそ10日分の量です。
原産国はアメリカ合衆国です。
ヒルズのk/dか、ロイヤルカナンの腎臓サポートか、
迷われた場合は、👇コチラの記事も参考になさって下さい。
ロイヤルカナン腎臓サポート
ヒルズと並ぶ、動物用療法食の2大ブランドがロイヤルカナンです。
フランスの会社ですが、アメリカのマース社の傘下(子会社)です。
マース社は、カルカンやシーバといったキャットフードのブランドも持っています。
腎臓サポート ドライ(500g/2kg/4kg)
ロイヤルカナンの腎臓サポートのドライフードには、4種類のバリエーションがあります。
☝4種類の違いを比べています。
この4つの中で、一番厳格にタンパク質とリンを制限しています。
現在(2022年11月)流通している製品の原産国はフランスです。
腎臓サポート スペシャル ドライ (500g/2kg/4kg)
"スペシャル"といっても、良く治るという意味ではなくて…。
嗜好性を重視して作られています。
嗜好性を良くするために、若干、リンの制限がゆるいです。
腎臓サポート セレクション ドライ(500g/2kg)
セレクションはカロリー重視の腎臓サポートです。
他の2つに比べて、カロリーが5%ほど高めです。
粒の形、食感は"シーバDuo"に近いサクサク食感です。
腎臓サポートパウチ (85g)
》猫用 腎臓サポート ウェット パウチ チキンテイスト 85g
》猫用 腎臓サポート ウェット パウチ フィッシュテイスト 85g
パウチ製品の原産国はオーストリアです。
だし部分のとろみはちょっと強め。
水っぽいスープだしが好きな猫さんにはちょっと不人気かもしれないです。
フィッシュテイストとチキンテイストの2種類があります。
イースター ベッツセレクション(国産メーカー)
前回の東京オリンピックの年、昭和39年創業の歴史のある日本の会社です。
元々は観賞魚用の飼料を作っていたメーカーです。
猫用腎ケア PPレーベル
腎ケアの一番の特徴は、活性炭(ヘルスカーボン)が配合されている点。
粒が真っ黒です。
活性炭は食べ物が消化されてできた窒素(BUNの素になります)を吸着するので、
腎臓の負担が軽くなる、尿毒症の進行を遅らせられる・・・
というのが、腎ケアのセールスポイントです。
猫用腎ケア BPレーベル 400g, 1.5kg(300gx5袋)
PPレーベルとBPレーベルの違いは、
P(ポーク)プロテインか、B(ビーフ)プロテインかの違いで、
"素材"の違いです。
共に原産国は日本です。
Dr.'s Care ドクターズケア キドニーケア
日本農産工業の療法食です。
なかなか聞きなれない会社名だと思いますが、
ヨード卵光の会社というと、グッと親近感が湧くかもしれません。
キドニーケア チキンテイスト
キドニーケア フィッシュテイスト
ドライフードの場合、なるべく小さいサイズがおススメです。
480gのパッケージは120gが4袋で、比較的小分けされているのがおすすめポイントです。
原産国は日本です。
キドニーケアプラス 可溶性繊維
MONGE(モンジ) VetSolution
「MONGE (モンジ)」は、療法食を必要とする犬・猫や家族のために、1963年にスタートしたイタリアのプレミアムフードのメーカーです。
VetSolution 猫用 腎臓サポート
肉食獣の猫さんにとって、タンパク質を制限するフードはなかなか調節が難しいもの。
良質な鶏肉を主原料にして、グレインフリーで穀物アレルギーなどに対するリスクを回避し、
消化にかかる胃腸の負担を軽減しています。
粒は食べやすい平たい楕円形。原産国はイタリアです。
個人的に思う、良い腎臓病の療法食とは・・・
良い腎臓病の療法食(私見)
- 猫さんが嬉しそうによく食べてくれる
- できるだけ小容量のパッケージ
- 人間の生活を圧迫しないお値段
慢性腎臓病の猫さんが療法食を食べる事はとても有意義な事ですが、
療法食を食べなかったときに悲観的になり過ぎるのもよくありません。
療法食にこだわり過ぎて充分な量を食べられず、少しずつ痩せてしまうと本末転倒です。
ケアの1つとして、参考にして頂くとありがたいです。
まとめ
- 低リン-慢性腎臓病の進行を遅らせるため、リンの含有量が少ないフードが選ばれます。
- 必要最低限のタンパク-適度なタンパク質摂取によって、筋肉量を維持しながら腎臓の負担を軽減します。
- ビタミンB群の補給-多尿により水溶性のビタミンB群の排泄が増加するため、補給が必要です。
- 体重を減らさないカロリー-体重の減少は予後の悪化要因の一つです。適切なカロリー量が配合されていることが必要です。
- 高消化性-脱水による便秘を防ぎ、消化吸収をスムーズにし、負担の少ないフードが選ばれます。
- 低ナトリウム-腎機能の低下によって、ナトリウムの排出能力が低下するため、過剰なナトリウムは腎臓に負担をかけます。
- 適切な脂肪分-脂質は体積当たりのエネルギーが高く、適度な脂肪分が配合されていることが必要です。
- オメガ3脂肪酸-炎症を抑える働きがあります。慢性腎臓病に関連する炎症をサポートするために、配合されるます。
- ミネラルバランス-ナトリウム以外にも、適切なミネラルバランスが配合されていることが必要です。
- 食べやすさ-猫さんが美味しく食べてくれることが一番大切です。猫さんが好きな味や食感を重視しましょう。