ポイント
ステージ別、症状別、猫用腎臓病療法食の使い分けをまとめました。
慢性腎臓病と診断されていない場合
慢性腎臓病と言われていませんが、7歳になって、食事に気を付けるとしたら、何がお奨めですか?
老齢のサイン
- 高いところに上らなくなった
- 痩せてきた。体重が落ちてきた。
- 毛づくろいをする時間が減った。
- あまり遊ばなくなった
- 便が硬くなった
- 水をたくさん飲む/尿の量も増えた
老齢のサインがない場合は、シニア用のフードに少しずつ切り替えるのがお奨めです。
サイエンスダイエットPRO(プロ) 健康ガード 腎臓・心臓 7歳〜
老齢のサインがある場合は、早期腎臓サポート系のフードを推奨します。
"お試し"には、ヒルズの早期アシストがおすすめ。
ステージⅠ(※クレアチニン <1.6mg /dL、※SDMA <18μg /dL)の場合
クレアチニン、SDMAの検査は複数回行い、基準値内であっても、持続的に上昇がある場合にはステージⅠと判断します。
BUNの上昇がないか? 尿比重の低下がないか?確認
BUNの上昇、尿比重の低下がない場合は、クレアチニン値が2.0mg /dLまでであれば、早期サポート系のフードを利用します。
ドライフードが主体の猫さんの場合、今後、水分摂取量が足りなくなる可能性も出てきます。
ウエットフードの比率を高くしたり、"食べる点滴"とも言われる、ゲルタイプの脱水ケアはお奨めです!
お歳をとっていくと、フードの容器は少し高めにしてあげると、上下運動が楽になり、首の負担が和らぎます。
猫壱のハイタイプ、フードボウルは倒れづらく、ウォーターボウルは目盛り付きで飲水量を把握できます。
今後、腎臓病が進行した場合、飲水量が多くなりますが、そのサインに早く気付くことができます。
ステージⅡ(クレアチニン 1.6-2.8 mg/dL、SDMA 18-25 μg/dL)の場合
猫の腎臓病の食事療法は、ステージⅡから推奨されています。
- 体重の変化
- 多飲・多尿
- 脱水
- 便秘
これらの有無、一般状態を注意して観察してあげてください。
ステージⅡから、一般的な腎臓病療法食は推奨されます。
👇療法食を一覧にしたページがありますので、ご覧ください。
スペシフックFKD | 腎臓サポート | 腎臓サポート スペシャル | 腎臓サポートセレクション | k/d 早期アシスト | k/d 腎臓ケア | ベッツセレクション 腎ケア | ベッツソリューション | Dr's キドニーケア | キドニーケアプラス 可溶性繊維 | 和漢・みらいのキャットフード低たんぱく | |
リン含有量 | 0.09g/100kcal | 0.078g/100kcal | 0.115g/100kcal | 0.100g/100kcal | 0.127g/100kcal | 0.110g/100kcal (チキン) 0.108g/100kcal (ツナ) | 0.5%以上 | 0.30%(乾物%) | 0.35%(チキン) 0.36%(フィッシュ) | 0.37% | 0.25% |
タンパク質含有量 | 5.5g/100kcal 22.9%(計算値) | 5.875g/100kcal 23.0%(計算値) | 6.625g/100kcal 26.0%(計算値) | 5.975g/100kcal 24.6%(計算値) | 7.7g/100kcal 32.3%(計算値) | 6.7g/100kcal (チキン) 28.3%(計算値) 6.9g/100kcal (ツナ) 28.3%(計算値) | 27.0%以上 | 22.0%以上 | 24.2% | 24.7% | 27.5% |
カロリー | 416kcal/100g 100kcal=24.04g | 392kcal/100g 100kcal=25.51g | 392kcal/100g 100kcal=25.51g | 411kcal/100g 100kcal=24.33g | 420kcal/100g 100kcal=23.81g | 422kcal/100g (チキン) 100kcal=23.70g 410kcal/100g (ツナ) 100kcal=24.39g | 370kcal/100g以上 | 392kcal/100g | 426kcal/100g(チキン) 423kcal/100g(フィッシュ) | 399kcal/100g | 356kcal/100g |
原産国 | デンマーク | フランス | フランス | フランス | アメリカ合衆国 | オランダ | 日本 | イタリア | 日本 | 日本 | 日本 |
主要タンパク源 | トウモロコシ蛋白、ジャガイモ蛋白、動物蛋白加水分解物 | 超高消化性小麦タンパク、超高消化性大豆タンパク、加水分解タンパク(鶏、七面鳥) | 超高消化性豚タンパク、加水分解タンパク(鶏、七面鳥)、超高消化性小麦タンパク | 超高消化性豚タンパク、超高消化性小麦タンパク、加水分解タンパク(鶏、七面鳥)、魚肉 | チキン | チキン、ターキー、エンドウマメ蛋白、全卵、米蛋白、(ツナ) | 米粉、ビーフミール、チキンミール、卵黄粉末 | 乾燥鶏肉、乾燥豆、乾燥魚、ジャガイモタンパク濃縮物、 | ミートミール、おから、全卵粉末、フィッシュミール、チキンレバーパウダー | ミートミール、おから、ポテトプロテイン、チキンレバーパウダー | 生肉(鹿,馬,魚)、国産雑節、豚肉粉 |
強化配合物1 | EPA&DHA(オメガ3脂肪酸) | 高消化性のタンパク質 | 高消化性のタンパク質 | 高消化性のタンパク質 | 必須アミノ酸(筋肉量の維持) | 必須アミノ酸(筋肉量の維持) | 活性炭(ヘルスカーボン®)配合 | 緑茶ポリフェノール(抗酸化、抗炎症) | EPA&DHA(オメガ3脂肪酸) | サイリウム、フラクトオリゴ糖(可溶性食物繊維) | 和漢(日本や中国由来の植物、食材を使用した食事による健康ケア) |
強化配合物2 | カリウムの含量を増加 | 独自の猫が好む香りと、粒の形(食欲の維持のため) | 独自の猫が好む香りと、粒の形(食欲の維持のため) | 独自の猫が好む香りと、粒の形(食欲の維持のため) | オメガ3脂肪酸(腎血流量をサポート) | オメガ3脂肪酸(腎血流量をサポート) | スーパーオキシドジスムターゼ(抗酸化物質) | フラクトオリゴ糖(可溶性食物繊維) | ビタミンE,C、セレン酵母(抗酸化成分) | 公式サイトで調べる | |
強化配合物3 | L-カルニチン、タウリンを補充(心筋の機能維持) | L-カルニチン(脂肪利用、筋肉量の維持) | L-カルニチン(脂肪利用、筋肉量の維持) | キシロオリゴ糖(腸内微生物を刺激) | EPA&DHA(オメガ3脂肪酸) | ||||||
パッケージ | 400g,2kg | 500g,2kg,4kg | 500g,2kg,4kg | 500g,2kg | 500g,2kg | 500g,2kg,4kg(チキン) 500g,2kg(ツナ) | 400g, 1.5kg(300g×5) | 400g,1.5kg | 480g(120g×4), 1.5kg | 480g(120g×4), 1.5kg | 800g |
1日の給与量 (体重3kg,標準体型) | 38g | 43g | 43g | 41g | 46g | 45g(チキン)、47g(ツナ) | 約60g | 35g | 53g | 56g | 54g |
Amazonで調べる | Amazonで検索 | Amazonで検索 | Amazonで検索 | Amazonで検索 | Amazonで検索 | Amazonで検索 | Amazonで検索 | Amazonで検索 | Amazonで検索 | Amazonで検索 | 公式サイトで調べる |
楽天で調べる | 楽天で調べる | 楽天で調べる | 楽天で調べる | 楽天で調べる | 楽天で調べる | 楽天で調べる | 楽天で調べる | 楽天で調べる | 楽天で調べる | 楽天で調べる |
ステージⅢ (クレアチニン 2.9-5.0 mg/dL、SDMA 26-38 μg/dL)の場合
ステージⅢになると、
- 嘔吐
- 食欲不振
- ずっと、だるそうに寝ている
といった徴候が増えていきます。
体重の変化には特に注意してあげてください。
体重は○○kgが良いという基準ではなくて、
変化を確認します。
ヘマトクリット値(Ht, PCV)リン(P, PHOS)の数値もチェック
血液検査を定期的に行う場合、BUNやクレアチニン、SDMAのほか、貧血の有無(ヘマトクリット値)や、リンの数値もチェックしてもらいましょう。
腎性貧血
腎臓では、"エリスロポエチン"という血液を作る素が作られます。
腎臓の機能が落ちると、貧血が起きることが多々あります。
猫はほかの動物に比べ貧血に強いので、
よほど貧血が進行しない限り、
フラフラになって倒れるという事はありませんが、
逆に言えば、貧血の症状が出た場合には、
かなり重度な場合がほとんどです。
貧血の改善・予防のために、
鉄剤や、ビタミンB群の補給を行うこともあります。
高リン血症
本来、尿に捨てられるはずのリンが、血液の中に溜まっている状態です。
リンとカルシウムは、体の中反応しあうので、骨のカルシウムが溶け出してしまったり、血管を傷め血栓の原因となります。
血中リン濃度の基準値上限は、概ね7-8 mg/dLですが、慢性腎臓病を患っている猫の場合では、5.0mg/dL以下だと安心です。
リンは食事中の"うま味"成分なので、リンが制限してある療法食を食べない場合は、リンの吸着剤を通常フードに混ぜて、なるべく体内に吸収させない工夫も行います。
ステージⅣ (クレアチニン >5.0 mg/dL、SDMA >38 μg/dL)の場合
ポイント
ステージⅣの慢性腎臓病の猫さんの食事療法には、"答え"がありません。
学術的に"良い事"が、必ずしも猫さんにとって良い事ではない事が多々あります。
このステージになると、
食事療法の目的が変わってくるかもしれません。
- 体重を維持する事
- 食欲を維持する事
- 美味しそうに食事を摂る事
飼い主さんによって、何を重視するかによって、提案する方法が変わります。
3つすべて満たせることは、なかなか難しいかもしれません。
美味しそうに食事を摂ることが最優先であれば、療法食ではなく、若いころから大好きだったものを食べられる分だけあげる、という方法も正解です。
体重を維持することが最重要であれば、スープ食・流動食をシリンジで与える、"介助給餌"という方法もあるかと思います。
食欲を維持して自分で食べる事が最重要であれば、ミルタザピンやステロイドなど、薬を使う事も間違った方法ではありません。
それぞれのお家で重要にしていることが違うので、SNSなどで、他の方がされている事や使っているものが違っていても、比較する必要は全くありません。
「ヨソはヨソ。ウチはウチ」と、考えましょう。
どうしても心配になったら、かかりつけの獣医師・動物病院も相談に乗ってくれるはずです。
補足要素
甲状腺機能亢進症を併発している、タンパク尿がある、慢性心疾患をもっている、尿結石がある・・・など、実際にはステージ分類だけでは説明できない要素が加わります。
療法食選びには、かかりつけの動物病院スタッフとの関りも大切にしてください。