- 尿結石、慢性腎臓病、糖尿病…おしっこと猫さんの健康は関わりが強いです
- 血液検査に比べ、痛みや苦痛が少ない検査なので、もっと活用してほしいです
- 最近では、多機能トイレも充実しているので、お家での観察も可能です
- 同時に、動物病院もうまく活用してください
尿検査はどのくらい間隔だと安心?
血液検査やレントゲンよりも、費用や身体への負担・ストレスが軽い検査です。
一般的に推奨されている健康診断の頻度よりも、繰り返し行ってあげたい検査です。
尿検査はどのくらい間隔だと安心?
- ~7歳 年に1~2回
- 7歳~ 年に2~3回以上
- 年齢にかかわらず 病歴があれば2か月に1回
- 病気の治療中の場合は月に数回
【軽視され過ぎ…】尿検査はなぜ大事なのか?
もともと、尿は腎臓を通過した血液から作られます。
尿を調べると、血液検査では判らないことが見えてくる場合があります。
どちらの方が良いという優劣ではなく、血液検査と尿検査、
組み合わせて結果を解釈すると、より高品質な検査結果が手に入ります。
例えば、BUNやクレアチニンよりも早く、慢性腎臓病を疑う事ができる場合があります。(※1)
※1:International Renal Interest Society,IRIS Staging Posters Cat,2013
【コスパ大】尿検査の費用はどのくらい?
尿検査には、次のようなものがあります。
- ペーパー試験紙を使った検査
- 尿を遠心分離して沈渣(ちんさ)物を顕微鏡で観察する検査
- 尿の濃さ(比重)を測る検査
- 検査センターで測定するような外注検査
費用については各動物病院の設定がありますが、血液検査の1/3~1/2くらいに設定されていると思います。
【やってみよう】お家での採尿方法~猫の尿検査~
尿検査には、液体の状態での尿が必要です。
動物病院で「おしっこを持って来てください」と言われても、
どうやって?何に入れて?といったわからない事だらけで、困ってしまいませんか?
猫の負担が少ない、コスパ最強の検査なので、飼い主さんには、採尿のコツをつかんでいただきたいです。
おたまを使う方法 ~追いかけ過ぎず、さりげなく~
100円ショップなどで、おたまを買ってきて使う方法。
注意点は、追いかけ過ぎず、さりげなく差し込みましょう。
邪魔されたり、ストレスを感じると排尿を我慢してしまい、膀胱炎の原因にもなります。
特に、下部尿路疾患(尿石症や膀胱炎)のフードを切り替える際には、
尿検査をしながら再発がない事を確認できると安心です。
ウロキャッチャー ~衛生的な採尿キット~
おたまの時と同様に、あまり追いかけ過ぎず、滑り込ませるように使ってください。
100本単位の場合もありますが、バラ売りで手に入れる事も可能です。
在庫があるか、動物病院にお尋ねいただくのも良いと思います。
システムトイレ ~チップは交換してから~
我が家は、この方法でした。
花王のニャンとも清潔トイレを使用していました。
ユニ・チャームや、アイリスオーヤマなどからも、様々なタイプののシステムトイレが発売されています。
下のトレーに尿が落ちますので、ペットシーツをひっくり返すか、サランラップを敷いておく方法でも可です。
注意点は、新しいチップに交換してから採尿すること。
尿がチップを通過しても検査結果に大きな影響はありません。
動物病院へ尿を持っていくときの注意・疑問点
必要な量は?
検査項目数にもよりますが、5~10cc程度(ペットボトルの蓋1杯前後)の量があれば十分です。
【前日の尿は不可?】何時間以内ならOK?
獣医学の教科書などには採取後4時間以内という記載があります。
時間経過は少ないに越したことはありませんが、
医療現場の実際の経験上は、丸1日程度の時間経過は問題ありません。
【冷蔵?常温?】保存方法は?
検査の目的(理由)によって変わります。
尿石症の結晶成分を見る事が目的なら、冷蔵しない方が良いです。
細菌感染の有無、pHやタンパクなど…尿の性質を検査する場合は冷蔵した方が良いです。
【何を調べてるの?】尿検査の項目
試験紙
pH
pH値は、酸性・アルカリ性の指標です。
pH7が中性、数字が大きい(8~9)とアルカリ性、数字が小さい(5~6)と酸性です。
pHは1日の中で変化しています。いくつが良いという指標はありませんが、
尿がアルカリ性の状態が続くと、ストラバイト結晶(尿石症)が起こりやすくなります。
市販の試験紙を使って、お家で猫の尿pHチェックすることも可能です
潜血
尿の中に血液が混ざっているかどうかを検査します。
腎臓や膀胱からの出血を検出します。
尿の潜血は、見た目では判断できない事もあるので、試験紙による検査が役立ちます。
👇1~3、どれが血尿か…見た目ではわかりますか??
正解は・・・
「2」番と、「3」番が血尿でした。
尿中タンパク
腎臓病で腎臓のフィルターの網目が粗くなってくると、尿の中にタンパク質が漏れ出してきます。
タンパク尿が出るタイプの腎臓病は、猫では経過が良くない事が多いので、注意が必要です。
尿糖
糖尿病の際に尿に糖が混ざります。腎臓病と糖尿病が併発している場合もあります。
尿に糖が混ざった場合、尿比重が高めになります。
沈渣物
尿の中の不純物を遠心分離して、顕微鏡で観察します。
尿結石になる手前の結晶を見つける事も有ります。
お家でもできるチェック項目は次の3つです。
- 体重の変化(増・減)
- 尿量の変化(増・減)
- 排尿回数の変化(増・減)
尿比重
尿の濃さ・重さを測ります。
慢性腎臓病を早期に発見できる場合があります。(※2)
※2:International Renal Interest Society,IRIS Staging Posters Cat,2013
尿糖や、タンパク尿の場合、尿本来の比重値よりも高めに出る場合があります。
尿比重の目安・・・1.000が真水です。
腎機能がしっかりある場合には、1.035以上
慢性腎臓病の後期には、1.008~1.012の数値になります。
注意点は、1回の検査だけで判断しない事。採尿タイミング(日にち)を変えて、少なくとも3回は尿検査をします。
外注検査
タンパク尿の検出の際、試験紙で疑わしい結果だった場合には、尿蛋白クレアチニン比(UPC)という指標を測定します。
検査センターに外注することが多く、数日以内に結果が届きます。
0.2以下の数値であれば、病的なタンパク尿は否定できます。
0.4以上はタンパク尿と判断、0.2~0.4はグレーゾーンで再検査が必要です。
【飼い主さんにもわかるかも】取れた時点で観察してみよう
尿を容器に移したら、尿の色、透明度などを眺めてみると良いです。
"気にしておく"という意識は、素晴らしいと思います。
色・透明度・臭い
数字にはできない観察点ですが、黄色具合、透明度、濁っていないか、独特の異臭がしないか?などを観察してみて下さい。
キラキラした尿って??
尿結石・結晶がある場合、「尿がキラキラしている」と、よく言われますが、
普段から気にしていないと、なかなか気づきにくいと思います。
尿検査と関係が深い他の観察点
特に慢性腎臓病を気にして尿検査を行う場合には、
他にも気にしておいてほしい"普段の数字"が、もう2つあります。
体重
いつもの体重を知っておくことは重要で、
病院を受診された場合も、1ヶ月で300g減ったとか、2年で2kg減ったなど、
変化が分かるととても役立ちます。
飲水量
慢性腎臓病の初期症状、「多飲・多尿」。
飲水量を数字で把握しておくと、なんとなく増えた?場合の"なんとなく"を判断することができます。
私は、慢性腎臓病のケア、長生きには"身体を脱水させない事に尽きる"と、考えます。
皮下点滴が必要になる場合も多々ありますが、積極的な飲水量の維持を心がけてあげたいです。