猫の慢性腎臓病の診断~総論~
猫の慢性腎臓病(CKD)は、「早期に治療を開始」することで、病気の「進行を遅らせる」ことが可能です。
慢性腎臓病の診断で用いられる、主要な検査方法を紹介します。
これらの検査は、病気の「発見だけでなく、進行度を把握するため」にも行われます。
慢性腎臓病の診断に必要な検査
1. 血液検査
「血液検査」は、腎臓病の診断における基本的な検査です。
血液中の「尿素窒素(BUN)」や、「クレアチニン(CRE)」の値を測定することで、腎機能の状態を確認します。
また、「電解質」や「貧血の有無」も確認できるので、病気の進行度や合併症を把握するのに役立ちます。
2. 尿検査
尿検査では、「尿比重(尿の濃さ)」や「タンパク質の量」、「潜血の有無」などを調べます。
特に、「尿の濃さ」を測定することで、腎臓が正常に機能しているかどうか判断できます。
また、尿検査は「感染症」や「尿路結石」、「糖尿病」など、他の病気との区別にも役立ちます。
3. 超音波検査(エコー)
超音波検査では、腎臓の「形」や「大きさ」、「内部の構造」を観察します。
「多発性嚢胞腎(PKD)」や「腫瘍」、「結石」などの、異常を確認するためにも非常に有用です。
慢性腎臓病では、腎臓が「小さく硬くなる(萎縮する)」傾向があるため、その特徴も診断に役立ちます。
4. X線検査(レントゲン)
X線検査は、腎臓の「大きさ」、「周りの臓器との関係」を確認するために行われます。
「結石」や「腫瘍」などの、異常を発見するのにも効果的です。
5. 血圧測定
高血圧は、慢性腎臓病の「原因」にも「結果」にもなる重要な徴候です。
血圧測定は、慢性腎臓病の治療計画を立てる際に役立ちます。
また、高血圧が引き起こす「網膜剥離(失明)」を防ぐためにも重要です。
6. SDMA
SDMAは、腎機能の「早期発見」に役立つマーカー検査です。
血液検査で測定され、腎臓が「40%の機能を失うと」、知らせてくれます。
BUNやCREと比べて、慢性腎臓病の早期発見に有用とされています。
7. UPC(尿タンパク・クレアチニン比)
UPCは、尿中の「タンパク量」を「クレアチニン量」で割った値を指します。
この検査は、「タンパク尿の有無」を判断するために行われます。
8. 腎生検
腎生検は、腎臓の組織を採取して詳細に調べる検査です。
特に「原因不明の腎疾患」や、「腫瘍の診断」に用いられます。
ただし、熟練した技術が必要なため、検査に慣れた施設・獣医師の下で実施する必要があります。
検査を組み合わせる重要性
慢性腎臓病の診断では、1つの検査だけで、「病気の有無」や「進行度」を完全に把握することはできません。
「複数の検査を組み合わせる」ことで、より正確な「診断」と、「治療計画」を立てる事が可能になります。
- 血液検査と尿検査を組み合わせて、腎機能を評価する。
- 超音波検査やX線検査で腎臓の「形態」や、構造的異常を確認する。
- 血圧測定やUPCで腎臓への負担を把握し、「合併症を予防」する。
- SDMAで「早期の腎機能低下」を発見する。
慢性腎臓病診断の流れ
- 年齢と症状の確認
中~高齢猫で、「多飲多尿」、「体重減少」、「食欲不振」、「嘔吐」などの症状が見られる場合、慢性腎臓病も疑います。
- 初期検査の実施
「血液検査」と「尿検査」を行い、腎機能を確認します。必要に応じて「SDMA」や「UPC」も測定します。
- 画像検査
「超音波検査」や「X線検査」で、腎臓の形態や内部構造を評価します。 - 合併症の確認
血圧測定や追加の血液検査で、「高血圧」や「貧血」、「その他の合併症」を調べます。
診断を受けた後の対応
慢性腎臓病と診断された場合、年齢や、現在の状態、ステージなどを考慮した「治療計画(選択肢)」を提案します。
「療法食」、「投薬」、「輸液治療」などが中心となりますが、定期的な検査による経過観察も必要です。
まとめ
猫の慢性腎臓病の診断には、さまざまな検査が必要です。
「血液検査」や「尿検査」をはじめ、「画像検査」や特殊な検査を組み合わせて行います。
獣医師は、病気の「進行度や原因」を把握して、治療の「選択肢を提案」します。