猫の慢性腎臓病の診断~尿検査~
猫の慢性腎臓病(CKD)の診断では、尿検査が非常に重要な役割を果たします。
腎機能や病気の進行度、他の疾患との関連性を把握するために欠かせません。
尿検査の重要性
腎臓は、尿を作って老廃物を排泄する働きを持っています。
尿の成分を調べることで、腎臓が正常に機能しているかどうかを判断することができます。
尿検査の利点:
- 早期発見に役立つ:腎臓の障害が軽度な段階でも異常を示す場合がある。
- 非侵襲的:採尿は比較的簡単で、猫に負担が少ない。血液検査に比べて安価。
- 合併症の診断に有用:感染症や尿路結石、糖尿病など他の疾患の有無も確認できる。
尿検査で確認する主な項目
尿検査には、尿比重、タンパク尿、尿中の異常成分を調べます。
1. 尿比重
- 意義
尿比重は尿の濃さを示す指標で、腎臓が尿をどの程度濃縮できているかを評価します。 - 正常値
健康な猫では尿比重は1.035~1.060程度です。 - 異常の意味
慢性腎臓病では尿を濃縮する能力が低下し、尿比重が低くなります(1.008~1.012程度)。
2. タンパク尿
- 意義
尿中のタンパク質量を測定することで、腎臓のろ過機能を評価します。 - 異常の意味
タンパク尿は、腎臓のろ過膜に障害が生じている可能性を示します。
特に尿タンパク・クレアチニン比(UPC)が高い場合、慢性腎臓病の進行が疑われます。
3. 尿沈渣
- 意義
尿沈渣では、尿中に含まれる細胞や結晶、細菌の有無を調べます。- 赤血球:尿路に出血がある場合に見られる。
- 白血球:感染症の可能性を示唆。
- 結晶:尿路結石や尿pHの異常に関連。
4. pH値
- 意義
尿のpH値(酸性度・アルカリ度)を調べることで、腎臓の代謝調整能力を評価します。 - 正常値
猫の尿は一般的に弱酸性から中性(pH 6.0~7.5)です。 - 異常の意味
pHが高い(アルカリ性)場合は尿路感染症やストルバイト結晶の可能性があります。
低い場合は酸性化が進みすぎている(アシドーシスといいます)可能性があります。
5. グルコース(糖)とケトン体
- 意義
尿中の糖やケトン体の有無を確認することで、糖尿病など他の病気を診断することができます。 - 異常の意味
糖が検出される場合、糖尿病や腎臓での糖再吸収異常が考えられます。
尿検査が腎臓病診断に役立つ理由
1. 腎臓の濃縮能力の評価
慢性腎臓病では、尿の濃縮能力が低下します。この変化を確認することで、「早期に腎機能低下」を発見できます。
2. タンパク尿の有無
腎臓病の進行度を把握する上で、タンパク尿は重要な指標です。
尿タンパク・クレアチニン比(UPC)を測定することで、心配なタンパク尿かどうか判断ができます。
3. 他の疾患との鑑別
尿路感染症や糖尿病、尿路結石など、慢性腎臓病に伴う他の疾患や合併症の存在を確認できます。
尿検査の採尿方法
尿検査の精度を高めるためには、適切な方法で採尿を行うことが重要です。
1. 自然排尿の採取
猫がトイレで排尿した尿を採取します。専用の採尿キットも市販されています。
2. カテーテル採尿
必要に応じて獣医師がカテーテルを挿入して直接採尿します。
この方法は尿道を傷める可能性があり、あまり推奨されていません。
3. 膀胱穿刺
エコー検査の際に、膀胱に針を刺して尿を採取します。
尿路感染症の疑いがある場合に適した方法です。
尿検査を受けるタイミング
- 症状が見られたとき
多飲多尿や体重減少、食欲不振など腎臓病の徴候が見られる場合に行います。 - 健康診断時
年1~2回の健康診断に尿検査を取り入れることで、腎臓病を早期に発見できます。 - 治療の経過観察
腎臓病と診断された後も、尿検査を定期的に行い、病気の進行や治療効果を評価します。
尿検査だけでは不十分?
尿検査は腎臓病の診断やモニタリングに重要ですが、これだけでは腎臓の検査としては不十分です。
他の検査(血液検査、超音波検査など)と組み合わせることで、より正確な診断が可能になります。
まとめ
尿検査は、猫の慢性腎臓病を診断する上で欠かせない基本的な検査です。
尿比重やタンパク尿、尿中の異常成分を確認することで、腎臓の機能や病気の進行度を評価できます。
特に高齢猫では定期的な尿検査を受けることが推奨され、腎臓病の早期発見と適切な治療につながります。