猫の慢性腎臓病の治療~食事療法~
猫の慢性腎臓病(CKD)の治療の中心となるのが、食事療法です。
腎臓病用に特化した療法食は、腎臓の負担を軽減し、病気の進行を遅らせることを目的としています。
食事療法が慢性腎臓病に重要な理由
腎臓は、老廃物や余分なリン、ナトリウムを排泄して、バランスを調整する役割を担っています。
腎臓病になると、体内にこれらの物質が蓄積します。
食事療法は、以下のような方法で腎臓への負担を軽減します。
1. 老廃物の生成を抑える
療法食は低タンパクに設計されています。
体内で発生する老廃物(尿素窒素など)の量を減らします。
2. リンの管理
腎臓病が進行すると、血中リン濃度が上昇します。
腎臓にダメージを与えるので、リンの摂取を抑えたの食事が理想的です。
3. エネルギー補給
慢性腎臓病では体重の減少が生じます。
食事から効率的にエネルギーを摂取する必要があります。
療法食は高カロリーで、十分な栄養素を摂取できます。
4. 電解質バランスの調整
カリウムやナトリウムなどの、電解質バランスを適切に調整し、腎臓の働きを助けます。
療法食の特徴
腎臓病用療法食には、以下のような特徴があります:
- 低タンパク質
老廃物の生成を抑え、腎臓の負担を軽減します。 - ただし、必要なアミノ酸はしっかり含まれています。
- 低リン
食事に含まれるリンを必要最低限に制限しています。 - 高エネルギー
少量で十分なカロリーを摂取できるように設計されています。 - ナトリウム制限
身体の血流(血のめぐり)を安定化するため、ナトリウムの量が抑えられています。 - 食べやすい形状や風味
食欲が低下している猫でも食べてくれるように、形状や香りが工夫されています。
療法食を導入する際のポイント
1. 徐々に切り替える
猫は急な食事の変更に抵抗を示すことがあります。
あせらず、いままでの食事に療法食を少しずつ混ぜ、1~2週間かけて切り替えて下さい。
2. 猫の好みに合わせる
「ドライフード・ウェットフード」、「魚系・肉系」・・・猫の好みに合わせて下さい。
一般的には、魚系のウェットフード、スープ状のフードを好みます。
3. 獣医師の指導を受ける
療法食の選択や量については、必ず獣医師に相談しましょう。
猫の病状や進行度に応じた最適なフードを、いくつか提案してもらえます。
食事療法の課題と対策
1. 食べない場合の対処法
猫が療法食を食べない場合、以下の工夫が有効です:
- フードを「温めて香りを引き立てる」。
- 好きなウェットフードやトッピングを少量混ぜる。
- 少量ずつ頻回に与える。
2. 栄養バランスの維持
療法食以外のフードを与えすぎると栄養バランスが崩れる可能性があります。
主食として療法食を基本にし、嗜好性の高いフードを補助的に利用するのが理想的です。
※「療法食以外のものは絶対にダメ」と、「過度にこだわらない」事も必要です。
3. 多頭飼育の場合
他の猫が通常のフードを食べている場合、腎臓病の猫がそちらを食べたがることがあります。
それぞれの猫に合わせた食事を与え、必要に応じて食事時間・場所を分ける工夫をしましょう。
食事療法と、他の治療のくみあわせ
食事療法は、薬物療法や皮下点滴などの治療と組み合わせて行うことが一般的です。
療法食で腎臓への負担を軽減しながら、症状に応じた薬や点滴で体調を整えます。
療法食の導入で期待できる効果
- 腎臓病の進行を遅らせる。
- 食欲や体重の維持をサポートする。
- 症状(嘔吐、元気消失など)の緩和。
- 合併症(高リン血症や高血圧)のリスク軽減。
まとめ
食事療法は、猫の慢性腎臓病治療の中心的な役割を果たします。
低タンパク、低リンの療法食は腎臓への負担を軽減し、病気の進行を遅らせる効果があります。
導入には時間がかかる場合もありますが、飼い主が愛猫の好みや状態に合わせて工夫することで、効果的に取り入れることができます。