猫の慢性腎臓病の治療~薬物療法~
猫の慢性腎臓病(CKD)の薬物療法は、病状をコントロールし、症状を緩和するための重要な手段です。
薬物療法の目的
薬物療法は、以下のような目的で行われます:
1. 病気の進行を遅らせる
腎臓の「血流を改善」し、「負担を軽減する」薬剤を使用することで、腎機能の低下を抑えます。
2. 慢性腎臓病に伴う症状を緩和する
「食欲不振」、「嘔吐」、「高血圧」など…。
慢性腎臓病に伴う症状をコントロールします。
可能な限り、猫さんが快適に生活できるようにします。
3. 合併症の管理
「高リン血症」や「貧血」、「高血圧」など…。
慢性腎臓病に関連する合併症を治療するために、薬物療法が用いられます。
使用される主な薬剤
1. レニン・アンジオテンシン系抑制薬
- 目的:腎臓の血圧を下げ、腎臓内の過剰な血流を軽くします。
- 代表薬:ベナゼプリル(フォルテコール)
- 効果:尿タンパクの排出を減少させます。血圧が高い場合の管理にも役立ちます。
2. 抗高血圧薬
- 目的:全身の血圧を下げ、高血圧が腎臓や目、心臓に与える悪影響を軽減します。
- 代表薬:アムロジピン
- 効果:慢性腎臓病の猫でよく見られる高血圧のリスクを下げ、腎臓への負担を減らします。
3. 制酸剤(胃薬)
- 目的:慢性腎臓病でよく見られる嘔吐や胃腸障害を緩和します。
- 代表薬:ファモチジン、マロピタント(セレニア)
- 効果:胃酸過多を抑制し、吐き気を抑え、食欲の回復をサポート。
4. リン吸着剤(サプリメント)
- 目的:腎臓病に伴う高リン血症を改善します。
- 代表薬:カリナールコンボ、プロネフラ、イパキチンなど
- 効果:食事中のリンの吸収を抑え、腎臓のダメージを緩和します。
5. 抗酸化物質(サプリメント)
- 目的:酸化ストレスを軽減し、腎臓の損傷を防ぎます。
- 代表薬:脂肪酸(オメガ3)脂肪酸
- 効果:腎臓の炎症や細胞の酸化を抑制します。
6. 貧血治療薬
- 目的:赤血球を増加させるホルモンを補充して、貧血を治療します。
- 代表薬:ダルベポエチン、エリスロポエチン
- 効果:貧血を改善し、元気を取り戻す助けとなります。
7. 食欲増進剤
- 目的:慢性腎臓病の猫でよく見られる食欲不振を改善します。
- 代表薬:ミルタザピン、カプロモレリン(エルーラ)
- 効果:食欲を促進し、体重の減少を防ぎます。
薬物療法を始める際の注意点
1. 獣医師の指導に従う
薬剤の選択や投与量は、猫の体調や腎臓病の進行度に応じて調整されます。
自己判断での薬の使用は避け、必ず獣医師の指導を仰ぎましょう。
2. 定期的な検査を受ける
薬物療法の効果や副作用を確認するために、定期的な血液検査や尿検査が必要です。
3. 投薬のストレスを軽減
猫が薬を嫌がる場合、液体、錠剤といった剤型の変更などを、依頼してみて下さい。
投薬補助グッズを利用できる薬剤かどうかも、確認してみて下さい。
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薬物療法の限界と課題
慢性腎臓病の薬物療法は、病気を根本的に治すものではありません。
あくまで病気の進行を抑え、症状を緩和することを目的としています。
治療は長期的に続ける必要があり、献身的なケアが必要です。
まとめ
薬物療法は、猫の慢性腎臓病の進行を遅らせ、症状を緩和するための重要な治療法です。
腎臓への負担を軽減し、食欲不振や貧血、高血圧といった症状を改善することで、愛猫の生活の質を向上させることができます。