猫の慢性腎臓病の合併症~骨軟化症~
猫の慢性腎臓病(CKD)は、全身に影響を及ぼす病気です。
骨がもろくなる骨粗しょう症は、腎臓病が進行することで起こる深刻な合併症の一つです。
骨の強度が低下し、折れやすくなるだけでなく、猫の運動や生活の質(QOL)に大きな影響を与えます。
骨粗しょう症とは?
骨のミネラル成分が不足し、正常な骨密度を保てなくなる状態を指します。
慢性腎臓病に伴う骨粗しょう症は腎性骨異栄養症や二次性上皮小体機能亢進症とも呼ばれます。
腎機能の低下によって、カルシウム代謝に異常が生じる病気です。
骨軟化症の原因
1. 高リン血症
腎機能の低下に伴って、血液中のリン濃度が上昇します(高リン血症)。
高リン血症は骨からカルシウムを引き出し、骨の強度を低下させます。
2. 活性型ビタミンDの不足
腎臓はビタミンDを活性化します。
活性化したビタミンDは、カルシウム吸収を助ける役割があります。
腎機能が低下すると、ビタミンDが活性化されなくなり、腸からのカルシウム吸収が低下します。
3. カルシウムとリンのバランスの崩壊
血液中のリンが過剰になると、カルシウムとリンが結合して骨からカルシウムが溶け出します。
骨がもろくなり、骨折しやすくなります。
4. ホルモンの異常
上皮小体ホルモン(PTH)の分泌が増加し、骨の代謝が乱れます。(二次性上皮小体機能亢進症)
このホルモンは、骨を溶かして血液中にカルシウムを流出させる働きがあり、骨密度を低下させます。
(※上皮小体は副甲状腺とも呼ばれます)
骨軟化症の症状
- 動きの鈍化:ジャンプを避ける、歩行がぎこちない。
- 痛みや不快感:触られるのを嫌がる、痛がる。
- 骨折のリスク増加:軽い衝撃でも骨折しやすくなる。
- 食欲不振:痛みや不快感によるストレスで食欲が低下する。
- 体重減少:食欲低下や運動量の減少に伴う体重減少。
これらの症状が進行すると、猫のQOL(生活の質)が著しく低下します。
骨軟化症の診断方法
骨軟化症の診断には、以下の方法が用いられます:
1. 血液検査
- リン値やカルシウム値を測定し、バランスの乱れを確認します。
- 上皮小体ホルモン(PTH:パラソルモン)値を測定。
2. X線検査
骨密度の低下や骨の異常を視覚的に確認します。
3. 超音波検査
上皮小体の肥大が疑われる場合に検査します。
実際には、高齢猫が骨折した際、血液検査で、腎臓や上皮小体の異常が偶然見つかる、というケースの方が多いです。
骨軟化症の予防策(=腎臓病のケア)
- 腎臓病の早期発見 定期的な健康診断で腎臓病の徴候を早期に発見し、進行を抑えます。
- 食事管理 腎臓の状態に合わせたフードを与えることで、リンやカルシウムのバランスを整えます。
- 水分補給 十分な水分摂取を促すことで、腎臓の負担を軽減します。
- 定期的なモニタリング 血液検査やX線検査を定期的に受けることで、骨の状態を確認します。
まとめ
骨粗しょう症は、猫の慢性腎臓病の進行による重篤な合併症の一つです。
適切な管理と治療によって進行を遅らせることが可能です。
日々の観察や定期的な健康診断を通じて早期に異常を察知し、獣医師と協力して愛猫の生活の質を守る努力を続けることが大切です。