猫の慢性腎臓病の予後~病期(ステージ)~
病気の進行度(ステージ)に応じて、適切な治療を行うことで、病気の進行を遅らせることが可能です。
猫の慢性腎臓病は、IRIS(国際獣医腎臓病研究グループ)によるステージ分類で、進行度を判定します。
IRISによる病期(ステージ)分類
IRISは、慢性腎臓病を以下の4つのステージに分類しています。
血液中のクレアチニン濃度やSDMA、尿検査の結果などを基に判断します。
ステージ1:腎臓病の超早期段階
- 特徴:
- クレアチニン濃度:1.6mg/dL未満(SDMA値が軽度上昇)。
- 症状:ほぼ無症状。
- 腎機能の低下がごくわずかで、外見上の異常が見られないことが多い。
- 治療目標:
- 早期発見に基づき、栄養学的なケアを開始する。
- 定期的な検査で、状態の変化を見つける。
- 予後:適切なケアを行えば、長期間良好な状態を維持することが可能。
ステージ2:軽度の腎機能低下
- 特徴:
- クレアチニン濃度:1.6~2.8mg/dL。
- 症状:軽度の多飲多尿が見られる場合がある。
- 病気の進行は緩やかで、臨床症状はほとんどない。
- 治療目標:
- 食事・栄養学的ケアの見直し(療法食の導入も検討)。
- リン吸着剤や降圧薬を、必要に応じて使用。
- 定期的な血液検査で腎機能をモニタリング。
- 予後:早期にケアを開始すれば、良好なQOLを維持できる可能性が高い。
ステージ3:中等度の腎機能低下
- 特徴:
- クレアチニン濃度:2.9~5.0mg/dL。
- 症状:食欲不振、体重減少、嘔吐などの症状が目立ち始める。
- 腎臓の濾過機能が低下し、血液中に老廃物が蓄積。
- 治療目標:
- 療法食の使用、栄養学的サポート(食欲不振時は嗜好性の高いフードや食欲増進剤の使用も検討)。
- 高血圧や高リン血症、脱水症状への対応。
- 必要に応じて皮下点滴や薬物療法を追加。
- 予後:治療次第で、年単位の良好な生活が可能だが、病状の変化に注意が必要。
ステージ4:重度の腎機能低下
- 特徴:
- クレアチニン濃度:5.0mg/dL以上。
- 症状:重度の嘔吐、食欲不振、脱水、元気消失。
- 腎臓の機能が著しく低下し、全身状態も悪化。
- 治療目標:
- 症状を緩和し、生活の質を維持する。
- 輸液治療や薬物療法を積極的に行う。
- 合併症(貧血、高血圧)への対応。
- 予後:進行が早いケースも多い。「集中的な治療」と「緩和ケア」のバランスが求められる。
病期が予後に与える影響
1. ステージ1~2の予後
- 早期発見が鍵:この段階での発見とケアの開始が、病気の進行を大幅に遅らせ、良好な予後を得るためのポイントです。
- 生活の質を保てる:適切な栄養管理や、予防的治療により、健康的な生活を維持することが可能です。
2. ステージ3の予後
- 治療が予後を左右:食事療法や薬物療法、点滴治療が予後に直接影響します。飼い主さんの治療への取り組みも重要です。
- 定期的なモニタリングが必要:合併症の予防や、早期対応に繋がります。
3. ステージ4の予後
- 治療の目的が変化:病気の根本治療ではなく、「症状の緩和」や「QOLの向上」が治療の主な目標となります。
- 短期的な管理が重要:日・週単位の体調管理が中心となり、獣医師と密な連携が求められます。
予後を改善するためにできること
1. 定期的な検査
血液検査や尿検査を定期的に行い、病気の進行や治療効果を確認します。
2. 早期治療の開始
病気が軽度な段階でケアを開始することで、病気の進行を大幅に抑えることが可能です。
3. 栄養学的アプローチ
療法食に限らず、栄養素のバランスを大切に、身体の体重が落ちないフード選びを提案します。
4. 飼い主さんによる経過観察
日常的に猫の体調や行動を観察し、異常があれば早めに対応することが重要です。
まとめ
猫の慢性腎臓病の予後は、病気のステージによって大きく異なります。
早期段階(ステージ1~2)での発見と治療が、愛猫の健康を長期間保つ鍵となります。
ステージ3以降でも適切な治療とケアを行うことで、病気の進行を抑え、生活の質を維持することが可能です。