猫の慢性腎臓病の症状~嘔吐~
猫の慢性腎臓病(CKD)の飼い主さんが気づきやすい症状の一つに「嘔吐」があります。
この場合の嘔吐は、一過性の胃腸のトラブルとは異なります。
慢性腎臓病の進行によって、体内の毒素の蓄積が原因で起こることが多いです。
慢性腎臓病で嘔吐が起こる原因
腎臓が正常に機能しないと、体内にさまざまな問題が発生し、それが嘔吐につながります。
主な原因を以下にまとめました。
1. 老廃物の蓄積
腎臓の機能が低下すると、血液中の老廃物や毒素(尿毒症の原因)が十分に排出されなくなります。
これらの毒素が血液を介して胃腸に影響を及ぼし、嘔吐や吐き気を引き起こします。
2. 胃酸の増加
腎機能不全は、「過剰な胃酸の分泌」を起こします。
胃酸過多になると、胃が荒れたり胃炎を起こしたりするため、嘔吐が頻繁に発生します。
3. 消化管の炎症
腎臓病が進行すると、腸内環境が悪化し、胃や腸に炎症が起こることがあります。
これが原因で嘔吐や下痢が見られる場合もあります。
4. 体内のホルモンバランスの異常
腎臓はホルモンの調整にも関与しています。
慢性腎臓病ではホルモンバランスが乱れ、胃腸機能に影響を及ぼす可能性があります。
嘔吐の症状と特徴
慢性腎臓病による嘔吐には、以下のような特徴があります。
- 頻度が多い
短期間で何度も嘔吐することがあり、食後に限らず起こることもあります。 - 吐く物の内容が変化
食べ物が未消化の状態で出てくる場合や、胃液や胆汁、白い泡を吐く場合があります。 - 口臭の悪化
嘔吐とともに、口からアンモニアのような異臭がすることがあります。
これは血液中の老廃物が口腔内や胃腸に影響を及ぼしているためです。 - 体調の悪化を伴う
嘔吐が続くと、「元気がなくなる」、「食欲が低下する」、「体重が減る」といった全身症状が見られるようになります。
嘔吐を放置するとどうなる?
慢性腎臓病による嘔吐を放置すると、以下のような深刻な問題が発生する可能性があります。
1. 脱水症状
嘔吐によって体内の水分やミネラルが失われ、慢性腎臓病の進行に伴う多尿と相まって、脱水状態が悪化します。
2. 栄養不足
食べたものを吐き出してしまうため、必要な栄養が吸収されず、体重減少や筋肉の消耗が進みます。
3. 体力の低下
嘔吐が頻繁に続くことで体力が奪われ、免疫力の低下や病気への耐性が弱まる可能性があります。
嘔吐が見られたとき、飼い主さんができること
嘔吐が慢性腎臓病の徴候である場合、以下のような対策を取りましょう。
1. 動物病院での診察
嘔吐が頻繁に見られる場合は、まず動物病院で診察を受けましょう。
血液検査や尿検査、超音波診断などを通じて、腎臓の状態や嘔吐の直接的な原因を特定します。
2. 食事の見直し
原因に合った療法食を導入することで、身体への負担を軽減できます。
3. 水分補給
嘔吐が続く場合、脱水症状を防ぐために十分な水分を摂取させる必要があります。
ウェットフードやスープタイプのフードで水分を補う工夫をしましょう。
4. 投薬治療
獣医師の指示のもと、吐き気止めや胃粘膜保護剤などの薬を使用することで、嘔吐の頻度を抑えることができます。
まとめ
嘔吐は、猫の慢性腎臓病の進行を示す重要な症状の一つです。
単なる消化器の問題ではなく、腎臓機能の低下や体内の毒素の蓄積が原因である可能性もあります。
飼い主さんが早期に気づき、適切に対応することが愛猫の健康を守る鍵となります。