猫の慢性腎臓病の合併症~電解質異常~
猫の慢性腎臓病(CKD)では、腎臓の機能低下により、体内の電解質バランスが崩れます。
電解質は体内の水分調整や神経の働き、筋肉の収縮などに重要な役割を果たしいます。
電解質異常とは?
電解質とは、体内で電気を持つ粒子(イオン)で、主に以下のような成分です
- ナトリウム(Na⁺)
- カリウム(K⁺)
- カルシウム(Ca²⁺)
- リン(P)
腎臓はこれらの電解質の濃度を調整する役割を担っています。
腎機能が低下すると調整ができなくなり、バランスが崩れてしまいます。
主な電解質異常とその影響
1. 低カリウム血症(カリウム不足)
カリウムは筋肉や神経の正常な働きに必要な成分です。
腎臓病では尿の排泄量が増えて、カリウムが過剰に失われ、低カリウム血症を引き起こします。
- 症状:
- 筋力低下や後ろ足のふらつき。
- 食欲不振。
- 元気消失。
- 心臓の不整脈(重症の場合)。
- 対策:
- カリウムサプリメント(液体、粉末など)。
2. 高リン血症(リン過剰)
腎臓がリンを十分に排泄できなくなると、血中のリン濃度が上昇し、高リン血症を引き起こします。
これは腎臓にさらなる負担をかけるだけでなく、骨粗しょう症の原因にもなります。
- 症状:
- 骨折。
- 食欲不振。
- 筋肉・神経の震え。
- 嘔吐や元気消失。
- 対策:
- リン吸着剤の使用。
- 低リンの療法食への切り替え。
3. 低または高カルシウム血症
リン濃度の上昇はカルシウムとのバランスに影響を与えます。
低カルシウム血症や、高カルシウム血症を引き起こすことがあります。
- 症状:
- 低カルシウム血症:筋肉のけいれんや神経症状。
- 高カルシウム血症:脱水や食欲不振、嘔吐。
- 対策:
- カルシウムサプリメントや、静脈点滴による補充(低カルシウム血症の場合)。
- カルシウム値を下げる薬(高カルシウム血症の場合)。
4. ナトリウム異常
ナトリウムの不足や過剰も、腎臓病では見られることがあります。
過剰なナトリウムは高血圧の原因となり、不足すると脱水や低血圧を引き起こします。
- 症状:
- 脱水。
- 無気力。
- ふらつき。
- 対策:
- 適切な塩分量の療法食を与える。
- 点滴によって電解質補正を行う。
電解質異常の診断方法
- 血液検査: 電解質の濃度を直接測定します。カリウム、リン、カルシウム、ナトリウムのバランスを確認します。
- 体調の観察: 筋力の低下や元気消失、嘔吐などの症状があれば、電解質異常を疑います。
まとめ
猫の慢性腎臓病に伴う電解質異常は、気づかないうちに猫の健康を大きく損なう可能性があります。
日々の観察や、定期的な健康診断を通じて早期に異常を発見し、適切な治療や予防策を講じることが重要です。