猫の慢性腎臓病の原因~高血圧~
猫の慢性腎臓病(CKD)の原因や進行を助長する要因の一つとして「高血圧」が挙げられます。
高血圧そのものが腎臓にダメージを与えるだけでなく、慢性腎臓病の進行を加速させるため、特に注意が必要な徴候です。
猫の高血圧とは?
高血圧とは、血液が血管を通る際の圧力が異常に高い状態を指します。
正常な最高血圧は猫では120~160mmHg程度とされていますが、これを大きく超えると高血圧と診断されます。
高血圧は「サイレントキラー」と呼ばれるように、初期症状がわかりにくく、気づかないうちに腎臓や目、心臓、脳などに大きなダメージを与えることがあります。
高血圧が腎臓に与える影響
腎臓には無数の細かい血管が集まっています。高血圧によってこれらの血管に過剰な圧力がかかると、次のような影響が生じます。
1. 糸球体の損傷
腎臓のろ過装置である糸球体は、高血圧により血管が傷つきやすくなります。
この損傷が進むと、腎臓のろ過能力が低下し、老廃物が排出できなくなり、慢性腎臓病に直結します。
2. 腎臓の血流障害
高血圧が続くと、十分な酸素や栄養が供給されないため、腎臓の機能がさらに低下し、腎不全のリスクが高まります。
3. 悪循環の形成
腎臓病が進行すると、血圧を調節するホルモンのバランスが乱れるため、高血圧がさらに悪化します。
この「腎臓病と高血圧の悪循環」に陥ると、病気の進行が加速します。
猫が高血圧を引き起こす原因
高血圧は単独で発生することもありますが、多くの場合、他の疾患に伴って発症します。
猫の高血圧の主な原因には次のようなものがあります。
1. 慢性腎臓病
腎臓病自体が高血圧の原因となることも多く、CKDの猫の20~30%が高血圧を合併していると言われています。
2. 甲状腺機能亢進症
甲状腺ホルモンの過剰分泌が代謝を高め、血圧を上昇させる原因となります。
特に高齢猫に多い病気です。
3. 糖尿病
糖尿病に伴う血管障害が高血圧を引き起こすことがあります。
4. 肥満
肥満による血管への負担が高血圧のリスクを増大させる要因となります。
猫の高血圧の症状
高血圧は初期症状がほとんどないため、飼い主が気づきにくい病気です。
しかし、進行すると以下のような症状が現れることがあります。
- 視力の低下や失明(網膜剥離による)
- 行動の変化(夜鳴きや落ち着きのなさ)
- 頻繁な嘔吐
- けいれんや神経発作
特に視力の低下は、高血圧が原因で起こりやすい症状です。
これらの徴候が見られたら、早めに動物病院を受診しましょう。
高血圧の診断と管理
猫の高血圧を診断するには、動物病院での血圧測定が必要です。
動物用の血圧計を使って行いますが、動物病院内では、緊張のため血圧が高くなる傾向があります。
1. 降圧薬の投与
高血圧をコントロールするために、獣医師が処方する降圧薬を使用します。
代表的な薬としては、カルシウム拮抗薬やACE阻害薬が挙げられます。
2. 慢性腎臓病の治療
高血圧の背景に腎臓病がある場合、腎臓病の管理が重要です。
療法食や輸液治療で腎機能をサポートします。
3. 定期的な血圧測定
治療を始めた後も、定期的に血圧を測定してコントロール状況を確認することが大切です。
動物病院内では、緊張のため「血圧が高くなる傾向」があるので、
お家で、こまめに血圧測定をされる方も多いです。
高血圧を予防するためのポイント
高血圧の予防には、日常的なケアと健康管理が重要です。
1. 定期的な健康診断
腎臓病や甲状腺機能亢進症などの基礎疾患を早期発見するために、健康診断を定期的に受けることをお勧めします。
2. バランスの良い食事
腎臓に優しい食事を選び、塩分や過剰なタンパク質を避けることで高血圧のリスクを軽減します。
3. ストレスの軽減
ストレスは血圧に悪影響を与えるため、猫がリラックスできる環境を整えることが大切です。
まとめ
高血圧は、猫の慢性腎臓病の原因であり、進行を加速させるリスク要因です。
特に高齢猫では高血圧のリスクが高まるため、早期発見と適切な管理が重要です。