猫の慢性腎臓病の診断~血圧測定~
猫の慢性腎臓病(CKD)の診断の中で、血圧測定は重要な検査の一つです。
高血圧は慢性腎臓病の「原因」にも「結果」にもなります。
血圧を測定することで、腎臓への負担や病気の進行度を把握できます。
なぜ血圧測定が必要なのか?
猫における血圧測定の目的は、以下の点にあります:
1. 高血圧が腎臓に与える影響
高血圧は腎臓の血管に直接的なダメージを与え、腎臓病を進行させます。
高血圧を早期に発見することで、腎臓への負担を軽減することができます。
2. 腎臓病が引き起こす高血圧
慢性腎臓病では、血圧を調節するホルモンのバランスを崩します。
高血圧を招き、腎臓病の進行を加速させる悪循環に陥ることになります。
3. 合併症の発見
高血圧は腎臓だけでなく、他の臓器(特に心臓や眼、脳)にも深刻な影響を与えます。
血圧測定を通じて、「合併症の予防」や「早期発見」が可能です。
血圧測定の方法
猫の血圧測定は、病院で行われる場合がほとんどですが、家庭用の動物用血圧計も販売されています。
ERDEエルデ動物用血圧計の購入の際には、模造品にご注意ください。
「いま何度」(有限会社アキオ企画)さんのサイトから、正規品が購入可能です。
またたびペットケアさんのサイトから、お試しレンタルも可能です。
血圧の基準値と異常値
- 基準値:猫の血圧の基準値は、125~155mmHg(収縮時),75~100mmHg(拡張期)
- 高血圧:収縮期血圧が160mmHg以上の場合、高血圧と診断されます。
- 160~179mmHg:軽度の高血圧。腎臓や他の臓器に徐々に影響を及ぼす可能性があります。
- 180mmHg以上:重度の高血圧。腎臓だけでなく、目や心臓、脳への深刻な影響が懸念されます。
血圧測定で分かること
1. 腎臓病の進行度
慢性腎臓病が進行するにつれて、腎臓による血圧の調整機能が失われ、高血圧が見られることが多くなります。
血圧測定により病気の進行を把握できます。
2. 合併症のリスク
高血圧は目の網膜剥離や失明、心臓への負担(心肥大)を引き起こす可能性があります。
早期に血圧をコントロールすることで、これらのリスクを軽減できます。
3. 治療効果の評価
降圧薬を使用している場合、血圧測定を行うことで薬の効果を確認し、適切な薬の量や治療計画を立てることができます。
血圧測定の注意点
- ストレスによる影響
動物病院で測定する場合、ストレスによって血圧が一時的に急上昇します。
リラックスした環境での測定が重要です。 - 複数回の測定
正確な値を得るために、複数回の測定を行い、その平均値を使用します。
血圧測定を行うタイミング
- 症状が見られる場合
高血圧の症状(ひどい夜鳴き、動きが鈍い、突然の失明など)がある場合。 - 腎臓病の診断後
慢性腎臓病と診断された猫では、定期的な血圧測定が推奨されます。 - 高齢猫の健康診断
7歳以上の猫では、血圧測定を含む健康診断を定期的に受けることが望ましいです。
血圧測定と他の検査の組み合わせ
血圧測定は、他の検査と組み合わせて行うことで、より正確な診断が可能になります。
- 血液検査・尿検査:腎機能の状態を評価。
- 超音波検査(エコー):腎臓の構造を確認。
- 眼底検査:高血圧が引き起こす目の異常(網膜剥離や出血)を確認。
まとめ
血圧測定は、猫の慢性腎臓病の診断や治療の経過観察において欠かせない検査の一つです。
血圧の経過観察によって、腎臓への負担を軽減し、病気の進行を抑えることが重要です。