猫の慢性腎臓病の合併症~尿毒症~
猫の慢性腎臓病(CKD)が進行すると、体内の老廃物や毒素が十分に排泄されなくなります。
この状態を尿毒症といい、腎臓病の末期で起こる重篤な合併症の一つです。
尿毒症は全身に影響を及ぼすため、適切な対応が重要です。
尿毒症が起こる原因
尿毒症は、老廃物(尿素窒素など)が血液中に蓄積し、全身の臓器や組織に悪影響を及ぼす状態です。
主な原因は以下の通りです:
- 老廃物の排泄不全
腎臓が十分に尿を作れなくなるため、血液中の毒素が排泄されず蓄積します。 - 体内の「酸・アルカリ」バランスの乱れ
腎臓は、身体の酸性・アルカリ性の調節を担っています。 - 腎機能の低下により血液が酸性に傾き臓器が正常に働けなくなります。
※アシドーシスといいます - 電解質異常
カリウムやリンなどの「電解質バランス」が崩れることで、細胞や組織の働きが阻害されます。
尿毒症の症状
尿毒症は全身に影響を及ぼすため、症状は多岐にわたります。以下は主な症状です:
消化器症状
- 下痢・嘔吐
- 食欲不振
- 口内炎や口臭(アンモニア臭)
神経症状
- 意識低下
- けいれん
- ふらつき・歩行困難
心血管症状
- 高血圧
- 心拍数の異常(不整脈)
- 脱水や浮腫(むくみ)
その他の症状
- 体重減少
- 毛艶の低下
- 排尿の量や頻度の異常(多尿または乏尿)
これらの症状が進行すると猫の日常生活に支障をきたし、緊急の治療が必要になる場合があります。
尿毒症の診断方法
尿毒症は以下の検査を通じて診断されます:
- 血液検査
- 尿素窒素(BUN)やクレアチニンの上昇:腎機能の指標。
- リン値の増加やカリウム値の異常。
- 尿検査
- 尿の濃縮機能の低下。
- 尿中のタンパクや血液の検出。
- 画像診断
- 超音波やX線で腎臓の形状やサイズを確認し、腎不全の進行度を評価します。
尿毒症の治療方法
尿毒症は腎臓病の進行による重篤な状態であるため、以下のような集中的な治療が行われます:
1. 老廃物の排出促進
- 点滴(緊急的な場合は静脈点滴)で体内の水分量を増やし、尿毒素の排出を促します。
2. 食事療法
- リンやタンパク質の摂取量に配慮した食べ物の摂取。
3. 薬物療法
- 制吐剤や胃酸抑制剤:嘔吐や胃腸症状を緩和します。
- リン吸着剤:血中のリン濃度を低下させます。
- 降圧薬:高血圧を管理します。
4. 酸塩基バランスの調整
- 血液が酸性に傾いている場合は、重炭酸ナトリウム(メイロン)を投与してバランスを整えます。
5. 輸血
- 重度の貧血には、場合によって輸血を行う場合があります。
尿毒症の予防策
尿毒症を予防するためには、慢性腎臓病の進行を抑えることが重要です。
- 定期的な健康診断
- 早期に腎臓病を発見するために、血液検査や尿検査を定期的に受ける。
- 食事管理
- 栄養学的なケアによって、腎臓に負担をかけない食生活を提供します。
- 水分摂取の促進
- 十分な水分を摂取させ、尿毒素の排泄を助けます。
- ストレスの軽減
- 猫がストレスを感じない環境を整えることで、腎臓の負担を軽減します。
まとめ
尿毒症は猫の慢性腎臓病が進行した際に発生する重篤な合併症です。
適切な治療を受けなければ命に関わる状態となります。
迅速な対応が非常に重要です。日々の観察によって、愛猫の生活の質を守ってあげて下さい。