猫の慢性腎臓病の原因~薬物の長期使用~
猫の慢性腎臓病(CKD)の原因の中で「薬物の長期使用」は、意外に知られていないリスクの一つです。
薬物は病気の治療に欠かせないものですが、不適切な使用や長期的な負担が腎臓に悪影響を与えることがあります。
薬物の長期使用が腎臓に与える影響
腎臓は、投与された薬物を排出する重要な役割も果たします。
そのため、薬物が長期間使用されると、腎臓に大きな負担がかかり、慢性的なダメージにつながることがあります。
特に以下のような薬物が腎臓に影響を与えるリスクが高いとされています。
腎臓に負担をかけやすい薬物
1. 非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)≒解熱鎮痛剤
痛みや炎症の緩和に使用されるNSAIDs(例:メタカム、オンシオールなど)は、腎臓の血流を低下させる可能性があります。
長期間の使用や高用量での使用は、腎機能の低下や急性腎障害を引き起こすことがあります。
2. 抗生物質
抗生物質・抗菌薬は、腎臓に対して毒性がある場合があります。
感染症の治療に効果的ですが、使用期間が長引くと腎臓に負担をかけることがあります。
3. 利尿薬
利尿薬は、体内の余分な水分を排出するために使用されますが、腎臓に負荷をかけることがあります。
特に、長期的な使用や適切でない投与量が問題となることがあります。
4. 化学療法薬(抗がん剤)
がん治療に使用される薬剤は、腎臓に対して毒性を持つものが多く、治療中は腎機能の定期的なモニタリングが必要です。
5. 免疫抑制剤(アトピカなど)
自己免疫疾患の治療で使用される免疫抑制剤も、腎臓に影響を与える可能性があります。
特に高齢猫では注意が必要です。
薬物による腎臓病の進行のメカニズム
薬物が腎臓病を引き起こす原因は、以下のようなメカニズムに基づいています。
1. 血流の低下
薬物が腎臓の血流を減少させることで、酸素や栄養の供給が不足し、腎組織が損傷を受けます。
2. 毒性による直接的な損傷
一部の薬物は腎臓の細胞に直接的な毒性を持ち、長期にわたって使用されることで腎臓に慢性的な損傷を引き起こします。
3. 老廃物の蓄積
薬物の代謝産物が腎臓に蓄積すると、腎機能の低下を招きます。
特に腎機能が弱っている猫では、この影響が顕著です。
薬物の使用で腎臓病を予防するためのポイント
薬物が必要な場合でも、適切に使用することで腎臓への負担を最小限に抑えることができます。
1. 獣医師の指導を守る
薬物は必ず獣医師の指導のもとで使用しましょう。
薬を止めたり、増減させたり、他の薬に切り替えることは避けてください。
心配事が生じた場合は、獣医師にご相談ください。
2. 定期的な健康診断
薬物を長期間使用する場合、腎機能を定期的にモニタリングすることが重要です。
血液検査や尿検査で腎臓の状態を確認しましょう。
3. 使用量を確認・管理
薬物を使用する場合、投与量と期間の計画をあらかじめ想定しておくことが望ましいです。
薬が「多すぎる」「少なすぎる」どちらも、状態や効果に影響を与えます。
獣医師と相談して適切な治療計画を立てましょう。
4. 水分摂取を促す
薬物使用中は、水分摂取を増やすことで腎臓への負担を軽減することができます。
自動給水器やウェットフードを活用して、十分な水分を摂れる環境を整えましょう。
もし腎臓病が進行してしまったら
薬物の影響で腎臓病が進行してしまった場合、以下のような対策が必要です。
- 輸液治療による脱水改善
- 定期的なモニタリングで腎機能を観察
- 薬物治療の見直しと調整
まとめ
薬物の長期使用は猫の慢性腎臓病の重要な原因の一つであり、治療に必要な薬物がかえって腎臓に負担をかけることがあります。
しかし、獣医師の指導を守りながら適切に管理することで、そのリスクを最小限に抑えることができます。