猫の慢性腎臓病の原因~免疫疾患~
「免疫疾患」が原因で、猫が慢性腎臓病(CKD)となる場合があります。
この場合、ケア管理が複雑で難しいことが多くなります。
免疫疾患とは?
免疫疾患を発症すると、本来「外敵から体を守る」システムに誤作動が生じます。
「敵と味方の区別」ができなくなり、自分自身の身体を攻撃してしまいます。
免疫反応の誤作動によって腎臓の組織が損傷し、慢性的な炎症が引き起こされます。
このような状態が続くと、腎機能が低下し、やがて慢性腎臓病へと進行します。
免疫疾患が引き起こす腎臓の問題
免疫疾患による腎臓への影響は、主に以下のような形で現れます。
1. 免疫複合体腎炎
抗原(体にとって異物と認識される物質)と抗体が結合した「免疫複合体」が腎臓に沈着。
腎臓のろ過機能を担う糸球体に炎症を引き起こす病気です。
この炎症が続くと、腎臓の組織が徐々に破壊されて、慢性腎臓病の原因となります。
2. 関連疾患による影響
猫伝染性腹膜炎(FIP)や猫免疫不全ウイルス(FIV)、猫白血病ウイルス(FeLV)などの病気は、
免疫システムを直接的に損傷し、腎臓に悪影響を及ぼします。
これらの感染症が慢性的な炎症を引き起こし、腎臓病の進行を早めます。
免疫疾患の発生原因
猫の免疫疾患が生じる正確な原因は明らかではありませんが、以下の要因が関与すると考えられています。
1. 遺伝的要因
ペルシャ猫やラグドールなどは遺伝的に腎臓病や免疫疾患のリスクが高いと言われています。
2. 外的要因
ストレスや過度のワクチン接種などの要因が免疫システムに影響を与える可能性があります。
3. 老化
加齢に伴い免疫機能が乱れ、正常な免疫反応ができなくなることがあります。
免疫疾患による慢性腎臓病の症状
免疫疾患が原因となる場合、一般的な慢性腎臓病の症状に加え、以下のような特徴が見られることがあります。
- 頻繁な感染症(免疫力低下による二次感染)
- 発熱
- 関節痛や動きのぎこちなさ
- 食欲不振や元気の低下
- 急激で重度な貧血
これらの症状が見られた場合は、早急に獣医師の診察を受けることが重要です。
免疫疾患による慢性腎臓病の診断と治療
免疫疾患が原因で腎臓病が進行しているかどうかを診断するには、
血液検査、尿検査、超音波検査などのほか、腎生検という病理検査が必要な場合があります。
腎生検は侵襲の大きいで、行うかどうかの慎重な検討が必要です。
治療のアプローチ
- 免疫抑制剤の使用
免疫システムの異常な働きを抑えるために、ステロイド剤や免疫抑制剤が使用されることがあります。 - 腎臓病の進行を抑える治療
食事療法(低タンパク・低リン食)や高血圧管理、電解質バランスの調整など、腎臓病そのものへの治療が並行して行われます。 - 感染症管理
免疫力が低下している場合は、二次感染を防ぐための治療が必要になることもあります。
飼い主ができる免疫疾患予防のポイント
免疫疾患を完全に予防することは難しいですが、以下のような取り組みでリスクを軽減できます。
1. 定期的な健康診断
健康診断で免疫疾患や腎臓の異常を早期に発見することが重要です。
特に高齢猫や、エイズ/白血病ウイルス陽性の猫、免疫疾患のリスクが高い猫種では、定期的な検査が推奨されます。
2. ストレス管理
猫はストレス(外的負荷)によって免疫機能が乱れることがあります。
穏やかな環境を整え、ストレスの原因を取り除くよう努めましょう。
3. 適切なワクチン接種
過度のワクチン接種が免疫システムに悪影響を与える場合もあります。
接種間隔など、獣医師と相談しながら行うことが大切です。
まとめ
免疫疾患は猫の慢性腎臓病の原因として見逃せない重要な要因です。
ただ、診断が難しく、免疫システムを直接治療することは難しい場合も多いです。
飼い主として早期発見と適切なケアを心がけることで、愛猫の生活の質を大きく向上させることができます。