猫の慢性腎臓病の診断~血液検査~
猫の慢性腎臓病(CKD)の診断において、血液検査は最も基本的で重要な検査です。
腎機能の状態や病気の進行度、さらに全身の健康状態・合併症の有無を把握します。
血液検査で確認する主な項目
慢性腎臓病の診断では、以下の項目が特に重要です。
1. 尿素窒素(BUN)
- 意義
腎臓が老廃物を処理する能力を測る指標です。BUNの値が高い場合、「腎機能の低下」や体内の「老廃物の蓄積」が疑われます。 - 異常値の原因
腎機能の低下、脱水、食事の影響(高タンパク食など)で値が上昇します。
2. クレアチニン(CRE)
- 意義
クレアチニンは、身体の筋肉から発生する物質です。腎機能が低下すると体内に貯留し、クレアチニン値が上昇します。 - 特徴
BUNよりも腎臓病の進行を正確に反映します。痩せて「筋肉量が少ない場合」は、低めの数値となります。
3. SDMA(対称性ジメチルアルギニン)
- 意義
SDMAは、腎機能が40%ほど失われると、異常値になります。クレアチニンよりも早期段階で異常を検出できます。 - 特徴
定期健診などで、広く活用されています。
4. 電解質
- 意義
腎臓はナトリウム(Na)、カリウム(K)、カルシウム(Ca)、リン(P)などの電解質バランスを調整する役割があります。- リン(P):値が高いと腎臓病の進行を疑います。経過観察の一つとして注意が必要です。
- カリウム(K):高すぎても低すぎても、心臓(不整脈)や筋肉(力が入らない)に異常が生じます。
5. 赤血球やヘモグロビン(貧血の有無)
- 意義
慢性腎臓病では赤血球を作るホルモン(エリスロポエチン)の産生が低下し、貧血を引き起こすことがあります。 - 特徴
貧血が進行すると、元気消失や全身の機能低下につながります。
6. 総タンパク質(TP)およびアルブミン(ALB)
- 意義
「栄養状態」の確認、「タンパク質の漏出」の確認が可能です。低アルブミン値は、栄養不足や腎臓病の進行を示します。
血液検査の重要性
1. 腎臓病の早期発見
血液検査は、腎臓病の初期段階で現れる微細な異常を見つけるために非常に有効です。
特にSDMAは、早期発見に役立つ指標です。
2. 病気の進行度の評価
慢性腎臓病は進行性の病気です。
血液検査によって病気がどの段階にあるのかを把握できます。
進行度によって、適切な「治療計画の提案」が可能です。
3. 合併症の管理
腎臓病に伴う「脱水」、「電解質異常」、「貧血」などの「合併症を把握するため」にも血液検査は必要です。
血液検査を行うタイミング
慢性腎臓病の診断や治療では、定期的な血液検査が必要です。
- 健康診断時
特に7歳以上の猫は年1~2回の健康診断で血液検査を受けることが推奨されています。 - 症状が見られたとき
多飲多尿、体重減少、食欲不振、元気消失などの症状が見られた場合、血液検査で全身の状態を確認します。 - 治療の経過観察
治療の効果や病気の進行を、「定期的にモニタリング」するために血液検査を行います。
血液検査だけでは不十分?
血液検査は慢性腎臓病の診断において重要な役割を果たします。
しかし、病気の全体像を完全に把握することはできません。
他の検査(尿検査、超音波検査、血圧測定など)と組み合わせることで、より正確な診断が可能になります。
血液検査の注意点
- 初期段階では異常が現れにくい
クレアチニン値やBUN値は、腎機能が70%以上失われるまで異常値として現れないことがあります。
そのため、SDMAなど早期発見が可能な検査項目を併用することが推奨されます。 - 検査結果の解釈
検査結果は猫の体調や水分摂取量にも影響されます。
獣医師と相談しながら総合的に判断することが重要です。
検査結果は保存して、後から、いつでも確認できるようにしましょう。
まとめ
血液検査は、猫の慢性腎臓病を診断し、病気の進行度や治療効果を評価するために欠かせない検査です。
BUNやクレアチニンだけでなく、SDMAや電解質などを総合的に評価することで、より正確な診断が可能となります。
愛猫の健康を守るため、特に高齢猫では定期的な血液検査を受けることを習慣づけましょう。