

猫の慢性腎臓病の診断~腎生検~
猫の慢性腎臓病(CKD)の検査の中で、「腎生検」は、かなり専門的な検査です。
腎臓の組織を直接採取して調べる腎生検は、検査を行う獣医師・スタッフの熟練度が求められます。
猫さんにも、やや負担がかかる検査なので、一般的な病院では、検査の必要性について、慎重に判断します。
腎生検とは?
腎生検(じんせいけん)は、腎臓の一部の組織を、針などを刺して直接採取し、顕微鏡で観察する検査です。
採取した組織を病理検査することで、腎臓内で進行している細胞レベルでの変化や、病気の原因を特定します。
腎生検が必要なケース
腎生検はすべての猫に行われる検査ではなく、以下のようなケースで実施が検討されます。
1. 慢性腎臓病の原因が、はっきりしない場合
腎臓病の原因に、感染症や免疫疾患、腫瘍などの特定の原因が疑われる場合。
2. 治療の効果が見られない場合
通常の治療に反応がない場合。腎臓の内部で起きている病変を調べ、治療方針の見直しに役立てます。
3. 他の検査で矛盾がある場合
血液検査や尿検査、画像診断の結果で、つじつまが合わない場合。
腎生検で分かること
腎生検により、以下の情報を得ることができます。
1. 腎臓の構造的な変化
- 糸球体や尿細管の状態:炎症、線維化、壊死などの病理的変化を特定します。
- 腎臓の組織構造:正常な腎組織と異常な組織の割合を確認します。
2. 原因の特定
感染症(ウイルスや細菌)、免疫介在性疾患、遺伝性疾患(多発性嚢胞腎など)がある場合。
3. 病気の進行度
腎臓組織の損傷具合や線維化の程度を評価し、慢性腎臓病のステージングに役立てます。
腎生検の方法と流れ
腎生検は高い専門性を要します。熟練した獣医師が、適切な設備の整った施設で行います。
1. 前準備
- 全身状態の評価:血液検査や画像検査で、猫が検査に耐えられる状態かを確認します。
- 麻酔・保定:猫が動かないように、全身麻酔または鎮静を施す場合もあります。
2. 組織の採取
- 超音波ガイド下穿刺
腹部から超音波を使用して腎臓の位置を特定し、細い針を挿入して腎組織を採取します。 - 外科的生検
腹部を切開して直接腎臓から組織を採取する方法です。
複雑な症例や腎臓の深い部分からの採取が必要な場合に行われます。
3. 組織の分析
採取した組織を病理検査会社に送り、顕微鏡で腎臓内部の状態を詳細に解析します。
結果が出るまでに数日から数週間かかる場合があります。
腎生検の注意点と代替検査
注意点
腎生検は慎重に行われるべき検査です。
すべての猫が対象になるわけではなく、以下の条件が整っている場合に実施されます:
- 猫の全身状態が安定している。
- 他の検査では診断が確定しない。
- 生検による診断結果が治療計画に影響を与える。
まとめ
腎生検は、猫の慢性腎臓病の診断において、「原因の特定」や、「病態の詳細な確認が必要な場合」に行う、高度な検査です。
実施には慎重な判断が必要で、熟練した獣医師が、適切な設備の整った施設で行います。
正確な診断と最適な治療計画の立案に役立ちます。

