お家での皮下点滴 病気とのお付き合い

【猫の皮下点滴と静脈点滴、くらべてみました】効果は?ストレス、苦痛は?~慢性腎臓病~

うちはずっと皮下点滴だけど、静脈点滴の方が効果があるの?

静脈点滴だと入院になるのはかわいそうだな…。実際のところ、どれくらい違うんだろう??

他のおうちの猫さんが、うちと違う治療を受けていると、ちょっと不安になりますよね。

皮下点滴、静脈点滴、それぞれにメリット・デメリットがあり、どちらが絶対に正解!というものではありません。

 

 

そもそも薬が効くためには・・・

薬が効くためには、血管の中に薬の成分が入り(吸収)、血流に乗って全身に行き渡る(分布)事が必要です。

薬を身体に入れる方法(投与経路)は、次のようなものがあります。

  • 経口投与(のみぐすり)
     
  • 皮下投与
     
  • 筋肉内投与
     
  • 静脈内投与
     
  • 外用薬(塗り薬・スポットオン)
     
  • 坐薬・舌下投与(経粘膜投与)
     

 

投与経路によって、薬剤が血管に入るまでのスピードが違います。

 

先ほどの6つの中では、静脈内投与が(血管にダイレクトに入れていますので)一番早く血管に入ります。

 

のみ薬(経口投与)は、口から胃を通過して、腸から吸収されて、

一度、肝臓を通過してから薬の成分が血管へ流れ込みますので、

注射に比べると薬が効くまでに時間がかかります。

 

皮下投与・筋肉内投与は、静脈内投与に比べると時間はかかりますが、

皮下の毛細血管から吸収されれば、身体の循環(血の巡り)に合わせて薬が循環(分布)します。

 

皮下点滴と静脈点滴の違い (1)

静脈点滴と比べて、皮下点滴は、点滴液・薬剤が血管に入るまでに少し時間がかかる

 

薬の効果は違う??

鎮痛剤が痛みを止める、制吐剤が吐き気を抑えるといった、薬の効果自体には違いはありません。

早く効いてほしい、緊急的な薬剤の投与は静脈内投与を行うのが基本です。

慢性腎臓病の経過観察中の点滴は、スピードが必要な場合でなければ、皮下点滴でも十分な効果が期待できます。

静脈点滴は、尿毒症が進行した場合や、今までと違う症状が出た場合などに、提案される事が多いと思います。

 

皮下点滴と静脈点滴の違い (2)

脱水の緩和という目的なら、どちらも効果に差は無い

吐き気止めなど、症状に合わせた薬を点滴に混和させる場合は、静脈内投与の方が早く効く

皮下点滴は、ゆっくりと構えても大丈夫な"慢性疾患"向けの方法。

 

動物が受けるストレス、痛み、苦痛に違いは?

静脈点滴・皮下点滴、共通のストレスや苦痛には次のようなものがあります。

  • 拘束(移動の自由の制限)
     
  • 皮膚に針を刺す痛み
     
  • 体内に液体が入ってくる違和感
     

それぞれについて、皮下点滴と静脈点滴の違いを挙げてみます。
 

拘束(移動の自由の制限)

皮下点滴の場合は、慣れれば拘束時間は数分です。

静脈内には急速に大量の液体は投与できません。
(※1時間に10~25mLくらいのスピード)

そのため、静脈点滴の場合は入院して時間をかけて点滴する必要があります。

 

皮膚に針を刺す痛み

静脈点滴の場合、腕の血管に"留置針"というカテーテル(管)を入れて、そこから点滴を入れます。

「腕に"針"が入れたまま」と表現される事がありますが、管を入れる際に針を刺しますが、留置してあるのは針ではなく"管"(カテーテル)です。

 

静脈点滴に使用する留置針のしくみ

 

一度、管を入れれば、血管から抜けなければ数日間残しておくことができます

点滴をする際には、管に針を刺すので、身体に刺す必要はありません。 

 

点滴の針はカテーテルの蓋に刺します

 

留置針が血管から抜けないように、接着包帯などを腕に巻きます。

包帯がストレスになったり、巻き加減が強くて腕先が浮腫(むく)むことがあります

 

粘着包帯でカテーテルを保護します

 

皮下点滴の場合は、留置針やカテーテルを使う事はほとんどありません。

点滴のたびに身体に針を刺します。

 

体内に液体が入ってくる違和感

点滴に使用する乳酸リンゲル液には刺激性はほとんどありませんが、制吐剤(吐き気止め)やビタミン剤など、注射の際に痛みを感じる薬剤があります。

皮下投与だと痛い薬、静脈投与にだけ使える薬、など…症状によって、投与経路を使い分ける場合もあります。

また、点滴の温度や投与スピードによっても、違和感・ストレスが変わる場合もあります。

 

皮下点滴と静脈点滴の違い (3)

①行動制限
静脈点滴では入院が必要。点滴をしている間はケージ内で移動不可。

皮下点滴は処置の間(数分間)は拘束。

②皮膚に針を刺す痛み
静脈点滴は留置針を装着する際に身体に針を刺す。留置針が抜けなければ、数日間使用できる。

皮下点滴は、その都度、身体に針を刺す。(次第に慣れてくれる子も多い)

③体内に液体が入る違和感
静脈点滴、皮下点滴ともに、液体の刺激・違和感を感じる事がある。

静脈投与の方が刺激が少ない薬剤もある。

 

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(補足)慢性腎臓病以外の点滴

リンパ腫など、抗がん剤の化学療法薬の一部は、皮下投与できない薬があります

静脈点滴で投与しますが、左手・右手どちらの留置針の管(カテーテル)も抜けてしまうと、しばらくの期間、静脈投与できなくなる場合があります。

 

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