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【猫の皮下点滴と静脈点滴、くらべてみました】効果は?ストレス、苦痛は?~慢性腎臓病~

2022年8月14日

 

 

 

  • ずっと皮下点滴だけど、静脈点滴の方が効果があるの?
  • 静脈点滴だと入院になるのか…。実際のところ、どれくらい違うんだろう??
  • 頑張って治療を受けてもらうんだから、絶対に後悔したくないな…

 

他のお家の猫さんが、違う治療を受けていると、ちょっと不安になるものです。

 

高齢になればなるほど、猫さんと慢性腎臓病は隣り合わせ

 

獣医師になって20年間、たくさんの慢性腎臓病の猫さん・飼い主さんと接しました。

 

と同時に、私自身も2017年に19歳だった愛猫を慢性腎臓病で亡くしました。

 

皮下点滴、静脈点滴、それぞれにメリット・デメリットがあります。

 

この記事では、それぞれの「仕組み」「効果」「苦痛」という視点で、似ているところ、違うところを解説します。

 

》》猫ちゃんの腎臓の健康を考えたサプリメント

 

 

薬が効くためには…(点滴の仕組み)

 

点滴に限らず、薬が効くためには、血管の中に薬の成分が入り(吸収)血流に乗って全身に行き渡ること(分布)が必要です。

 

薬を身体に入れる方法(投与経路)は、

次のようなものがあります。

  • 経口投与 (飲み薬)
  • 皮下投与 (注射)
  • 筋肉内投与 (注射)
  • 静脈内投与 (注射)
  • 外用薬 (塗り薬) 
  • 経粘膜投与 (坐薬/舌下)

 

投与方法によって、薬剤が身体に行きわたるまでのスピードが違います。

先ほどの6つの中では、静脈内投与が一番早く効果が表れます。

 

皮下投与筋肉内投与は、静脈内投与に比べると少し時間はかかりますが、

毛細血管から吸収されて、身体の循環(血の巡り)に乗って、薬が届きます。

 

皮下点滴と静脈点滴の違い (1)

静脈点滴に比べて、皮下点滴は、効果が表れるまでに少し時間がかかる

 

飲み薬(経口投与)は、口から胃を通過して、腸から吸収されます。

一度、肝臓を通過してから薬の成分が血管へ流れ込むので、注射と比べると、さらに時間がかかります

 

薬の効果は違う??

 

薬の効果自体には違いはありません。

早く効いてほしい、緊急的な薬剤の投与は静脈内投与を行うのが基本です。

 

状態が落ち着いている場合は、皮下点滴でも十分な効果が期待できます。

 

静脈点滴は、尿毒症が進行している場合や、今までと違う症状が出た場合などに、提案される事が多いです。

 

皮下点滴と静脈点滴の違い (2)

  • 脱水の緩和が目的なら、効果に差は無い。
  • 症状改善を急ぐ場合は、静脈内投与の方が早い。
  • 皮下点滴は、ゆっくり病気とお付き合いする"慢性疾患"向けの方法。

 

動物が受けるストレス、痛み、苦痛に違いは?

 

静脈点滴・皮下点滴、共通のストレスや苦痛には次のようなものがあります。

 

  • 拘束 (移動の制限) 
  • 皮膚に針を刺す痛み 
  • 体内に液体が入る違和感

それぞれについて、皮下点滴と静脈点滴の違いを挙げてみます。
 

拘束(移動の制限)

皮下点滴の場合、拘束時間は数分です。

 

静脈内には急速に大量の投与はできません。

そのため、静脈点滴の場合は入院して時間をかけて点滴する必要があります。

 

 ※午前中に入院、夕方まで点滴、夜はお家で過ごす、という半日入院の場合もあります。

 

皮膚に針を刺す痛み

静脈点滴の場合、腕の血管に"留置針"というカテーテル(管)を入れて、そこから点滴を入れます。

 

静脈点滴に使用する留置針のしくみ

 

一度、管を入れれば、血管から抜けなければ数日間残しておくことができます

 

管に針を刺すので、点滴のたびに身体に刺す必要はありません。 

 

点滴の針はカテーテルの蓋に刺します

 

留置針が血管から抜けないように、接着包帯などを腕に巻きます。

 

包帯がストレスになったり、腕先が浮腫(むく)むことがあります

 

粘着包帯でカテーテルを保護します

 

皮下点滴の場合は、留置針を使う事はありません。

点滴のたびに針を刺します。

 

体内に液体が入る違和感

点滴に使用する乳酸リンゲル液には刺激性はほとんどありません。

 

吐き気止めやビタミン剤などを混和した場合は、痛みを感じる場合があります。

 

症状によって、投与経路を使い分ける場合もあります。

また、点滴の温度や投与スピードによっても、違和感・ストレスが変わります。

 

皮下点滴と静脈点滴の違い (3)

  1. 行動制限 静脈点滴は入院が必要で、点滴中は移動不可。皮下点滴は数分で完了し、拘束時間が短い。
  2. 痛み 静脈点滴は留置針の装着で一度だけ針を刺す。皮下点滴は毎回針を刺すが、多くの猫が慣れる。
  3. 違和感 静脈点滴、皮下点滴ともに、液体の刺激や違和感を感じることがある。 

 

皮下点滴も、静脈点滴でも、点滴の目的は脱水の緩和です。

 

脱水が緩和された場合、点滴の量や頻度を、その都度見直す必要があります。

 

必要が無いのであれば、何となく点滴を続ける必要はありません。

 

》【脱却可能?】~猫の腎臓病~皮下点滴に頼らずに脱水を改善できるか?

 

栄養素のサポートが必要

動物の場合、点滴では必要な栄養素は十分補えません

栄養素のサポートは、とにかく食べる事、食べさせる事にこだわります。

 ※点滴をきっかけに食欲が出る場合があります

 

(補足)慢性腎臓病以外の点滴

リンパ腫など、抗がん剤の化学療法薬は、皮下投与できないものがほとんどです

静脈点滴で投与しますが、左手・右手どちらの留置針の管(カテーテル)も抜けてしまうと、しばらくの期間、静脈投与できなくなる場合があります。

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