ポイント
お家で皮下点滴をすることになったけど、
SNSを見たら、病院で教えられた方法とか、点滴の色、使っている液体の名前が違っていたり・・・。
あれ?これで合ってるのかな?なんでだろうな?と思った時に、活用して頂ける記事となっています。
点滴液は何が処方されていますか?
Twitterで、点滴液についてアンケートをとってみました。
圧倒的に、乳酸リンゲルですね。
乳酸リンゲルは薬品名で、商品名で言うと、ソルラクトとか、ラクテック、などがあります。
※中身はほぼ一緒です。
生理食塩水から解説した方が分かりやすいと思いますので、順番に解説していきます。
生理食塩水
体の体液と同じ濃度(0.9%)の食塩水を生理食塩水と呼びます。
水分の移動(浸透圧)に影響を与えず、体内で安全に使用できます。
点滴、傷口洗浄、手術時の組織保護、洗眼、尿道・膀胱洗浄などに利用されます。
生理食塩水を使うのは?
糖尿病が進行して昏睡状態になったり、高カルシウム血症の際には生理食塩水を使用します。
慢性腎臓病の猫に皮下点滴として処方される場合、特定の併発症や特別な理由があると考えられます。
リンゲル液
生理食塩水は、単に体液と同じ濃度の食塩水。
リンゲル液は、生理食塩水にカリウム(K)とカルシウム(Ca)を加え、より体液に近い成分に近づけた点滴液です。
乳酸リンゲル
リンゲル液に、乳酸が混ざっているものが乳酸リンゲル。
在宅での皮下点滴では、一番処方される事が多い点滴液です。
製品名では、ソルラクト、ラクテックといった商品があります。
なんで乳酸が混ざってるの?
腎臓病の猫さんの体液は、"酸性"に変化しているんだよ。
「乳酸」を混ぜると余計に"酸"性になりそうだけど、
身体の中で乳酸が分解されて、体液をアルカリ性に変化させるよ。
うちに出されたのは乳酸リンゲルじゃなかったけど?
乳酸リンゲルは、慢性腎臓病の猫さんの皮下点滴の第一選択だけど、
肝臓に負担をかけたくない場合や、
腫瘍を抱えている場合(※腫瘍細胞は乳酸を栄養源にする)に、
リンゲル液や酢酸リンゲルを使用する場合があるよ。
※参考文献(https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22360558/ 乳酸はがん細胞の成長を助けたり、がん細胞同士が互いに栄養をやり取りする際に使われたりします。)
酢酸リンゲル
リンゲル液に、酢酸が混ざっているものが酢酸リンゲル。
製品名では、ソルアセト、フィジオといった表記です。
なぜ酢酸が混ざってるの?
腎臓病の猫さんの体液は、"酸性"に変化します。
「酢酸」を混ぜると余計に"酸"性になりそうですが、身体の中で酢酸が分解されて、体液がアルカリ側に変化します。
なぜ乳酸リンゲルじゃないの?
乳酸リンゲルは、慢性腎臓病の猫さんの皮下点滴の第一選択です。
乳酸は肝臓で分解・代謝されるのですが、酢酸は肝臓と全身の筋肉でも分解されます。
肝臓に負担をかけたくない場合や、腫瘍を抱えている場合(※腫瘍細胞は乳酸を栄養源にする)などに、酢酸リンゲルを使用する場合があります。
※参考文献(https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22360558/ 乳酸はがん細胞の成長を助けたり、がん細胞同士が互いに栄養をやり取りする際に使われたりします。)
保存方法・温めた方が良い?使用期限はどれくらい?
- 輸液剤の使用は開封後1週間以内が目安
- 冷蔵庫で保管する方が無難だが、2~3日であれば、室温保存でも可
- ブドウ糖が混和されている輸液剤は腐敗しやすい
- 輸液する際は、常温~38℃くらいの温度にする
投与前に輸液剤を温める
輸液剤を使用するときは、常温~38℃くらいに温めておいてください。
バッグをぬるま湯につけるか、室温に20~30分ほど置いて下さい。
電子レンジを使用する際は、10~20秒ごとに撹拌して、確認しながら温めてください。
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皮下点滴液の保存方法
1回の点滴量は50~150mlくらい。
輸液頻度にもよりますが、1週間以内に使いきれると思います。
無菌操作がしっかりできていれば、輸液バッグ内で細菌が激しく増殖することはありません。
室温(約20℃)での保存が難しい夏場は、冷蔵庫での保存が無難だと思います。
複合ビタミンが混和されている場合
ビタミンB群製剤(例:レバチオニンなど)があらかじめ混和されていて、黄色い輸液剤を処方されている場合があります。
ビタミンB群は光が当たっていると効果がなくなってしまいますので、冷蔵庫のような冷暗所で保存する方が望ましいです。