概要
猫の慢性腎臓病のケアには、皮下点滴が必要になる場合が多いです。
状態が落ち着いた際、お家で皮下点滴という選択もありえます。
在宅の皮下点滴、いざ始めてはみたけれど、
- 猫が暴れる!嫌がる!ココロ折れそう…。
- 毎日点滴の人もいれば、2日に1回の人もいる。なんで?
- ソルラクト?生食?なんで使ってるものが違うの?
- 1回の量は?どれくらい?
色々な疑問が発生します。
在宅での皮下点滴によって、猫さんの食欲が出てきたり、吐く回数が減ったり、"顔色"が良くなっていくのが実感できると、治療に対するモチベーションが上がります。
飼い主さんの疑問解消に、少しでもお役に立てればよいなと思います。
在宅での皮下点滴、3大メリット
- 通院ストレスが減らせる
- 費用が抑えられる
- 治療・ケアに参加できる
『猫さんを動物病院に連れていく…』
気が重くなるハードルです。
キャリーケースに入れて、待合室で待って、診察台に乗せて、検査、注射、お会計、帰宅後は猫も人間もぐったり…。
年に数回ならまだ耐えられますが、週に2回、3回が義務になってしまうと、ココロ折れそうになってしまいます。
最初の数週間は、しっかり通院での治療が必要になると思いますが、病状が安定してくれば、お家でのケアができれば良いなと思います。
猫さんの通院ストレスが減らせて、費用が通院よりも抑えられます。
何より『飼い主さんご自身がケアしてあげられる』というのが最大のメリットです。
一度点滴を始めたら、一生、点滴生活なの??
毎日皮下点滴をしていた猫さんが、数か月かけて、週に数回に頻度を減らせることは、ありえます。
飲水量の確保・脱水の改善があれば…
👉【脱却可能?】~猫の腎臓病~皮下点滴に頼らずに脱水を改善できるか?
点滴液の種類ってこれでいいの?
自宅でのケアでは、色んな疑問がその都度発生すると思います。
- 何をしているのか?
- 何のためにしているのか?
- どうなればOKなのか?
といった事を理解しておくと、モヤモヤすることが少なくなると思います。
👆たとえば、9割の人は乳酸リンゲルなのに、ウチはリンゲルだったという場合に、「なんでだろう?」と思ったら、担当の獣医師に質問して、目的を共有しておく事が重要です。
「こんなはずじゃなかった」「そんなの知らなかった」という後悔はなるべく避けたいものです。
👉★点滴液を知ろう★ 生理食塩水・リンゲル・乳酸リンゲル~保存方法・使用期限は?~
点滴の量はこれでいいの? 1回量は? 頻度は?
猫さんの場合
1回の輸液量は50~150mLくらい。
ウチは250mLだけど…
「なんでだろう?」と疑問が生じたら、担当の獣医師に質問して、目的・理由を確認📝
慢性腎臓病での皮下点滴の目的は、『脱水の改善・緩和』です。
脱水を改善させる量は、その子その子で違います。
客観的に"計算"するには脱水量の判断が必要です。
脱水量の判断は身体を診ないとできません。
生き物の身体の様子は、全て計算で"答え"が出るものではありません。
何度も書きますが、「なんでだろう?」という疑問は、
担当の獣医師に質問して、目的と理由を共有しておく事が重要です。
脱水具合が強いと、補充する輸液量も多くしたいですが、脱水の程度がひどい子ほど、1回の輸液を吸収する能力が落ちています。
【ココロ折れそう】猫さんが暴れる…
ポイント
診察室で皮下点滴のやり方を撮影させてもらいましょう。
コツは・・・
- 素早く行う
- 押さえ過ぎず、猫のペースに合わせる
イメージトレーニングをしましょう。
★液漏れ・逆流★ ~トラブルシューティング~
在宅ケアは、色々なトラブルが発生しますが、大事なことは「まずは落ち着く」事です。
ほとんどの場合、"やり直し"が可能です。
点滴液が漏れたり、目標の半分しか入らなかったり、思い通りにならないことが、時には起こると思いますが、まずは「落ち着いて」無理せず、やり直すことで解決することがほとんどです。
定期検査・経過観察は何を見たらいい?どれくらいおき?
動物病院での血液検査は、皮下点滴を始めた当初は、月に1~3回。
状態が安定すれば、1~2か月に1回くらい。
状態を診ながら判断します。
病院がチェックすること
一般身体検査:問診、体重・血圧測定、触診・聴診など
生化学検査や血球計算(貧血の有無も含)といった血液検査、尿検査
改善?/横ばい?/悪化? という『変化』を確認する事が多いです。
おうちでチェックできること
お家でのチェック項目
- 食欲(実際に食べた量)の変化
- 排便の様子←脱水していると便秘が起こります
- 排尿の回数/量の変化
- 体重の変化
特に、体重の変化には気をつけましょう。
日々の体重測定、尿量のチェックが可能な
Catlog Boardという、トイレの下に敷くタイプのスマートトイレを、
上手く活用している飼い主さんもいらっしゃいます。
👉Catlog Boardを使用する事で結果的に医療費の節約になった症例 (キャトログボード)🐾
良かれと思ってやっていたのに…【副作用について】
目的としている効果ではない作用を副作用といいます。
『副作用は全て有害』という訳ではありませんが、想定内か?想定外か?というのは、心の準備に大きく違いがでます。
👉【ぐったり?肺水腫?】猫の在宅皮下点滴で起こりえる副作用🐾
特に、今までと方法が変わったり、新しい薬が追加されたりといった際は、担当の獣医師と、目的や理由を共有しておく事が重要です。
何度も書きますが、「こんなはずじゃなかった」「そんなの知らなかった」という後悔は避けたいものです。
【もしかしたら…】皮下点滴からの脱却方法
ポイント
『心配だから』『念のため』という皮下点滴が、しばしば行われています。
また、栄養の補給という誤解をされているケースも多いと感じます。
(※皮下点滴で1日の栄養素をまかなう事はできません)
- 本当は必要ない処置なのでは?
- 目的が共有されていないのでは?
- 皮下点滴以外の方法での改善は?
状態が落ち着いた時点で、検討してみる余地はあると思います。