猫の慢性腎臓病の予後~合併症の有無~
猫の慢性腎臓病(CKD)は、さまざまな合併症を引き起こします。
合併症は腎臓病の予後に大きな影響を与えるため、適切な管理と治療が必要です。
なぜ合併症が予後に影響を与えるのか?
慢性腎臓病が進行すると、老廃物や毒素が体内に蓄積します。
腎臓だけでなく全身にさまざまな悪影響を及ぼします。
猫の体調がさらに悪化、治療の複雑さが増し、予後に影響を及ぼします。
慢性腎臓病における主な合併症
1. 高血圧
- 原因:腎臓の血流調整機能の低下。
- 症状:網膜剥離や視力低下、心臓病、脳神経障害のリスク。
- 治療:
- 降圧薬(アムロジピンなど)の使用。
- ナトリウム制限のある療法食。
- 予後への影響: 高血圧を適切に管理できないと腎臓や他の臓器がさらにダメージを受け、病気の進行が早まります。
2. 高リン血症
- 原因:腎臓でのリンの排出能力が低下。
- 症状:骨折しやすくなる。全身の炎症、石灰化反応。
- 治療:
- 低リン療法食の導入。
- リン吸着剤の使用。
- 予後への影響: 血中リン濃度を管理することで腎臓への負担を軽減します。
3. 貧血
- 原因:腎臓で作られるエリスロポエチン(赤血球を作るホルモン)の不足。
- 症状:元気消失、疲れやすさ、食欲不振。
- 治療:
- エリスロポエチン製剤の投与。
- 鉄サプリメントの使用。
- 予後への影響: 貧血を改善することで猫の活動量や食欲が回復。QOLが向上します。
4. 脱水
- 原因:多尿による体内の水分不足。
- 症状:筋力の低下、口の乾き、元気の消失。
- 治療:
- 皮下点滴や飲水量の増加を促す環境整備。
- 予後への影響: 脱水が続くと腎臓への負担が増え、病気の進行が加速します。
5. 代謝性アシドーシス
- 原因:老廃物が排出されず血液が酸性に傾く。
- 症状:倦怠感、食欲不振、嘔吐。
- 治療:
- 皮下点滴での電解質調整。
- 重症例ではアルカリ剤の投与(静脈点滴)。
- 予後への影響: 酸性状態を改善することで体の代謝機能が改善し、猫の状態が安定します。
6. 尿路感染症
- 原因:免疫力の低下や尿の排出機能の低下。
- 症状:排尿時の痛み、血尿、発熱。
- 治療:
- 抗生物質、抗炎症薬の投与。
- 予後への影響: 感染が慢性化すると腎臓へのダメージがさらに増し、病状が悪化します。
7. 心臓病
- 原因:高血圧や腎臓病による血流の異常。
- 症状:咳、呼吸困難、疲れやすさ。
- 治療:
- 降圧薬や、甲状腺機能亢進症を併発している場合は抗甲状腺薬も検討
- 予後への影響: 心臓の負担を軽減。腎臓病のケアに影響します。
合併症の有無が予後に与える影響
日常的な観察が必要
- 飼い主さんが猫の日常生活を注意深く観察して、異変があれば早めに獣医師に相談。
- 食欲、排尿回数、活動量の変化を記録しておく。
合併症が適切に管理されている場合
- 病気の進行が緩やかになり、愛猫の生活の質が大幅に向上します。
- 治療に対する猫の負担も軽減され、飼い主との生活がより穏やかに。
合併症が悪化した場合
- 腎臓への負担が増し、病気の進行が加速。
- 猫の体力が低下し、治療の選択肢が限られてしまう可能性があります。
まとめ
猫の慢性腎臓病の予後を考える上で、合併症の有無・対処は非常に重要な要素です。
合併症を適切に管理することで、愛猫が「より快適に生活できる時間を延ばす」ことが可能です。