猫さんの慢性腎臓病・・・
ステージが2~3の時は、投薬や食事療法もしながら、お家で猫さんの一般状態(食欲・脱水の有無、便の状態、体重の変化など)を経過観察していくことになります。
平和な日々が続いていたある日、定期検査でBUNが30前後だったのが、50くらいに上昇することがあります。
「参ったな…」「ヤバいな…」と若干パニックになりますが、一回深呼吸して、結果の解釈を整理しましょう。
対策のお手伝いができると嬉しいです。
そもそもBUNとは?
腎臓病の検査うち、血液検査の項目は、腎機能が落ちると身体に溜まる物質、BUNやCre(クレアチニン)、P(リン)の上昇をチェックする事が多いです。
BUNは、血中尿素窒素と言います。
尿素窒素は血液に溜まっていくと、尿毒症という危険な状態になるので、できる限り溜まらないように、特に尿から排泄する必要があります。
腎機能が落ちると、尿からの排泄量が少なくなり、血液中に溜まってしまいます。
これがBUNが上昇した状態です。
簡単に考えると、BUNの数値が上昇した場合、考えられるのはどちらかです。
- 尿素窒素の量(割合)が増えた
- 尿素窒素の排泄が減った
腎機能の低下以外でもBUNは上がる
腎機能の悪化以外にもBUNが高くなる事があるので、見落としてはいけない原因も同時に考えます。
- 脱水
- 血液の循環不全(心臓病や低血圧)
- 排尿障害(膀胱炎・尿石症など)
- 食後の採血
- 高たんぱく食
- 消化管(腸)内での出血
- 発熱
他に見ておいた方が良い項目
血球計算(赤血球系)
- ヘマトクリット値(PCV)…貧血の有無
腎機能低下の場合、腎性貧血が見られる場合があります。
腎性貧血は必ず起こるものではありません。
腸からの出血も、ひどい場合には貧血を起こすことがあります。
- 網状赤血球数…作られたばかりの若い赤血球
腎性貧血の場合、貧血しているのに新しく赤血球が作られていない事もあります。
単純な出血などで貧血している場合は、新しい赤血球をどんどん作って、貧血を改善させようとする反応が見られます。(再生像といいます)
血球計算(白血球系)
体の中で炎症が起きると、免疫機能が活発に働く状態になり、血液中のBUNの上昇が見られます。
炎症が起きているかどうかは、白血球の検査で調べます。
血液化学検査項目
TP,ALB,GLOB…血液中のたんぱく質。
脱水の指標、蛋白漏出(蛋白尿など)の指標、炎症の指標となります。
Na,K,Cl…電解質。体液のバランスの指標。
特にK(カリウム)は腎臓の状態によって、過剰になったり不足したりします。
甲状腺ホルモン(T4)
甲状腺機能亢進症のお薬を飲んでいる猫さんは、甲状腺ホルモンのチェックを行います。
※甲状腺のお薬が効きすぎると、BUNが上昇します。
食欲はあるのに体重が落ちているという症状がある場合も、甲状腺ホルモンをチェックします。
甲状腺ホルモンは、あまり基準値内にこだわり過ぎない方が良い事もあります。
担当の獣医師とよくご相談下さい。
尿検査(比重・潜血・尿蛋白)
- 尿比重…尿の濃さを測る指標です。数字の変化(前回との比較)を観察します。
- 潜血・結晶…膀胱炎を起こしている場合があり、腎臓病の悪化要因となります。
- 尿蛋白(UPC:尿蛋白クレアチニン比)…慢性腎臓病の悪化要因です。
- 特にフォルテコールやセミントラを飲んでいる場合には、気にしておいた方が良い項目です。
血圧測定
慢性腎臓病の場合は、BUNの上下に関わらず定期的にチェックします。
体重の変化
基本中の基本です。
体重の変化(特に体重減少が怖い)は、どんな血液検査よりも、身体の状態を反映しています。
使用している薬・サプリの再考
腎臓から尿へ排泄される薬は量を減らして使います。
長く飲み続けているお薬があれば、一度、処方・用量が今の状態に適している獣医師に確認してもらって下さい。
サプリメントも、適しているかどうか、念のため獣医師に確認して下さい。
食べ物・飲水量のチェック
BUNは食べ物の中のタンパク質の量で上下するので、食べる物が変わるとBUNの数字は変化します。
タンパク質は、血や肉になって、免疫の役割をしたり、身体を作る材料になる物質なので、完全な制限はしないで下さい。
”良質の”タンパク質を摂るようにして下さい。
数字の上下に一喜一憂しない
あせらず・ゆったりと…
検査結果の数字は、採血したその瞬間の血液の状態に過ぎません。
とくにBUNは、ちょっとした事で上下しやすい項目です。採血に手間取っただけ(溶血)でも若干上昇します。
慢性腎臓病の猫さんの治療のゴールは、検査の数字を良くすることではなくて、猫さんも、飼い主さんも、苦痛なく長い時間を共有できることだと思います。
薬を飲ませるために、泣きながら朝・晩1時間格闘したり…1週間毎に検査をして結果の数字に一喜一憂したり…と、あまり自分自身を追い詰めないようにしてほしいです。